昨日、辺野古移設代執行訴訟で福岡高裁那覇支部は、沖縄県に対し、代執行を承認するよう命じる判決を下した。
日本政府と米軍の間で取り決められる法的構造の存在を知る人間からすると、当然の判決である。結論はとうの昔に決まっていたのだ。その根拠は日米合同委員会にある。
吉田敏浩著『「日米合同委員会」の研究』に組織図が載っている。同著は、その組織図について、次のように解説している。
「分科委員会や部会などには、日本側からは各分野・部門を管轄する日本政府各省庁のエリート官僚たち(長官・審議官・参事官・局長・部長・室長・課長クラスの官僚たちとその部下)が、アメリカ側からも同じく各分野を管轄する佐官・尉官クラスの軍人たちが、協議に参加しています。分科委員会や部会などで合意された事項は、「覚書」や「勧告」として日米合同委員会の本会議に文書が提出され、承認を受けることになっています。」
組織図を見ると、各省庁には気象庁、法務省、防衛省、総務省、経済産業省、国土交通省、環境省、外務省などがずらっと並んでいて、それらの省庁からエリート官僚が派遣されて、米軍の軍事的要求を最優先にする協議が行われている。
そこで合意された事項は、政府に報告される事なく、国民の知らないところで運用される。この実態がわかると、米軍の理不尽な行動と、それに対する政府の臆病な姿勢の理由が理解できるだろう。つまり、日本は今も米軍に乗っ取られた状態なのだ。
翁長県政以来、辺野古移設をめぐる全ての裁判で、沖縄県が敗訴する原因はそこにある。その本質を検証すると、沖縄県が日本政府に負けたというよりも、日本政府が米軍に敗北し続けている、と言うべきだろう。
辺野古移設をめぐる闘争は、実は、沖縄県民と無能な日本政府の戦いではない。沖縄県民と日米合同委員会との戦いである。否、日本全国民と日米合同委員会との戦いである。