"Nobody believes in our victory like I do." 「我々の勝利を信じるものは、私の他には誰もいない。」11月20日号の「タイム」誌の単独取材に応じたウクライナ大統領ゼレンスキーはそう言った。
ゼレンスキー大統領の悲壮感漂う言葉にはそれなりの理由がある。これまでウクライナ支援に積極的だったアメリカとNATO諸国は、反転攻勢すると言いながら一向に戦況が良くならないこと、ウクライナ政府の腐敗が深刻なことなどから、支援を渋り始めるようになったのだ。
それでもゼレンスキー大統領は周囲の制止も聞かず、さらなる支援を求めて9月に訪米したものの、案の定歓迎されることはなかった。ゼレンスキー大統領は失意のまま帰国した。そしてイスラエルとパレスチナの紛争が勃発。世界の目がウクライナからガザ地区に移る。米政府はユダヤ人が支配しているから当然、イスラエルを支援する。そうなるとウクライナへの支援は細り、関心も薄れてくる。今の状況はウクライナにとって、2重3重にも、否、決定的に不利な状況になっている。
信頼できる軍事評論家、国際政治学者は、当初からウクライナに勝ち目はないと発言してきたが、今のような状況に至れば、ウクライナは和平に動かざるを得なくなるだろう。たとえ自国に不利な条件でも飲まざるを得なくなる。
プーチン大統領は中国が示した和平案を高く評価しているから、この先、中国の仲裁で和平交渉が進む可能性も十分に考えられる。プーチン大統領は、10月16日、中国メディアの取材に答えて次のように語った。「私たちは中国の友人たちの提案を知っており、その提案を高く評価する。中国の提案は極めて現実的であり、和平協定の基礎を築くことができると思う」
犬猿の仲だったサウジアラビアとイランの和解の仲裁に成功して世界を驚かした中国が、ウクライナ戦争の和平仲裁をやり遂げれば、中国が一気に国際政治の中心に踊り出てくるのは間違いない。
強引なやり方で外交を誤り、常に戦争を仕掛けて国際社会を混乱に陥れてきたアメリカに代わって、一党独裁の中国が世界の信頼を得るという、なんとも信じ難い世界が登場するかもしれない予兆すら出てきた。
アメリカとNATO諸国に見捨てられたゼレンスキー大統領の焦る姿が目に浮かぶ。