沖縄よ! 群星むりぶし日記

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「そもそも、今般のウクライナ問題の遠因を創り上げたのは誰か?」遠藤誉さんによる秀逸な分析

遠藤誉さんは『チャーズ』(実際は漢字表記すべきだが、チャーにあたる漢字、上と下を上下に繋いだ字が辞書に見当たらないのでカタカナにした。ズは子である。)の著者である。

4、5年前に読んで衝撃を受けた本だ。以来、遠藤さんの深い中国分析に刮目してきたが、今日はこの本について解説するつもりはない。

ロシア軍によるウクライナ侵攻を受けて、遠藤さんが出した新著『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』に少しだけ触れたいと思う。とは言っても、ぼくはまだこの本を購入していない。これから購入するつもりだが、その前に、Amazonのサービスを利用して、初めの部分数ページを読み進めていると、その中に注目すべき文章を見つけたので紹介しようという気になった次第。遠藤さんは「はじめに」のところで以下のように記述している。

「それにしても、そもそも、今般のウクライナ問題の遠因を創り上げたのは誰か?ウクライナは本来、中立を目指していた。

アメリカの介入が強くなるにしたがって、ソ連崩壊によって分離独立した少なからぬ国がNATOに入る方向に動き始めた。しかし2008年のウクライナにおける世論調査では、まだNATO加盟反対者が半分を占めていた。それを崩したのは当時のバイデン副大統領だ。

2009年7月からウクライナに入り浸り、「ウクライナNATOに加盟すれば、アメリカは強くウクライナを支持する」と甘い罠をしかけて、遂にあの暴君プーチンウクライナを軍事攻撃する方向に踏み切らせることに成功した。そのプロセスは「第五章 バイデンに利用され捨てられたウクライナの悲痛」の年表に書いてある。

何よりも決定的なのは、2021年12月7日、バイデンは強引にプーチンと電話会談をして、「もしウクライナで紛争が起きても、アメリカは米軍を派遣するつもりはない」、すなわち「アメリカは参戦しない可能性が高い」旨のメッセージを発したことだ。

これは正に、「アメリカは参戦しませんから、どうぞお好きなようにウクライナを攻撃してくださいな」と言ったも同然ではないか? 何のために、このような「戦争への誘い」をバイデンはプーチンに言わなければならなかったのか?

ロシアがウクライナに軍事侵攻してくれれば、以下のようなメリットがバイデンにはあるからだ。

  • アフガン撤退で失ったNATOからの信頼を取り戻しNATOを結束させて、アメリカの存在と権威を高めることができる。
  • 欧州が安全保障上不安定になれば、自国を防衛しようと、欧州諸国がアメリカの武器商人から、より多くの武器を買ってくれるのでアメリカ経済が潤う。
  • 欧州諸国は主としてロシアから天然ガスを輸入しているので、ロシアに制裁を加えれば、欧州はアメリカから液化天然ガスLNG)を輸入するようになるので、アメリカが儲かる(事実、突如、爆発的にアメリカのLNGが欧州に向けて輸出されるようになった)。
  • 欧州情勢が不安定になれば、投資家はEUに投資せず、政局が安定しているアメリカに投資する(現にドルに対するユーロの価値下落が突然鮮明になってきた)。

アメリカはこうして戦争ビジネスにより第二次世界大戦後の世界制覇を維持してきた。その結果、大戦前の栄光ある欧州は輝きを失っていった。アメリカはNATOを通してEUの上で輝き続けていなければ不安なのだ。NATOが無くなればアメリカの存在価値は低くなる。だからソ連は崩壊しても米ソ冷戦時代のNATOは、アメリカのために存続していなければならない。

NATO不要論を唱えたトランプ前大統領との戦いにおいても、バイデンにはNATOが絶対に必要なのだ。そのためにはNATOの「敵」がいなければならない。この論理で動いてきたバイデンは、今、勝利しつつあるように見える。」

この後、インドが果たす役割について分析しているが、教えられることが多く、このまま続けようと思ったが、長くなってもいけないので、あえて割愛することにした。

副大統領の時からウクライナに入り浸り、甘い言葉でウクライナ政権を誘惑し、大統領に就任するやプーチン大統領を軍事侵攻へ誘導する。見事なまでの狡猾さである。

「この論理で動いてきたバイデンは、今、勝利しつつあるようにみえる。」と遠藤さんは書いているが、どのような形で収束していくのか、誰にも予想できるはずがない。ただひたすら真実を見極めたい。

メインプレイスの書店にこの本が置いてあれば、そこで購入しようと思う。なければ仕方がない、Amazonに注文する。まず地元の書店を優先することが大切だ。