沖縄よ! 群星むりぶし日記

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グッバイ女帝・小池百合子

石井妙子著『女帝 小池百合子』が出版されてたちまちベストセラーになった時点で小池百合子の政治生命は終わるはずだった。その本の中で、カイロ滞在時の小池氏と同居していた早川玲子(仮名)が、小池百合子カイロ大学を卒業していないと、かなり具体的に語っていたからだ。

しかし『女帝 小池百合子の出版後間もなく行われた都知事選で、小池百合子は再選を果たす。しかも366万票を獲得し、次点に281万票の大差をつける圧倒的勝利だった。この不可解な現象の原因はなんだろうか?

考えられることはまず、マスコミが小池氏の学歴詐称問題を真剣に追及しなかったこと。これが一番大きな原因だろう。もしマスコミが『女帝 小池百合子』を大きく取り上げて、学歴詐称問題を徹底追求していれば、小池氏の再選はなかったかもしれないのだ。

ただ面白いことに、この事実には裏があったということが小池氏の元側近、小島敏郎さんが告発したのである。その動画が配信されると、たちまち多くのユーチューバーが取り上げてネットを賑わせている。パンドラの箱が再び開いた。

文藝春秋5月号」に小島敏朗さんの告発文が載っているということで、昨日購入して読んでみた。その内容を簡単に箇条書きすると

  • 『女帝』発売後、小池知事は大変な危機感を抱いた
  • 学歴詐称問題を鎮静化させる目的で小島氏に対策を依頼
  • 「卒業はしているんですよね?」と小島氏「しているわよ」と小池知事
  • カイロ大学から声明文を出してもらえればいい、と小島氏が提案
  • その2日後にエジプト大使館のフェイスブック小池百合子カイロ大学を卒業しているとの声明文が掲載される
  • 声明文の文案を書いたのは小池知事のブレーンのA氏(元ジャーナリスト)

エジプト大使館のフェイスブックに掲載されたカイロ大学の声明文とされるものは、小池氏の学歴詐称問題に終止符を打つほどの効果をもたらす。上田令子都議が提出した「小池都知事カイロ大学卒業証書・卒業証明書の提出に関する決議案」は否決されマスコミは口を閉じ、学歴詐称問題は鎮静化した。その結果、小池氏は都知事選に圧勝したのである。

小島敏朗さんがこのままずっと黙ってくれていれば、小池都知事は最後の野望、日本初となる女性総理大臣の椅子を取りに行くはずだった。しかしまさに政界の一寸先は闇。

元側近の爆弾告発が小池百合子の計画を完全に狂わせた。これで小池氏の政治生命は泥まみれの状態で終わることだろう。多くの言論人も同じ論調で小池氏の失墜を予想している。しかし懸念材料がないわけでもない。何しろ想像を超えるしぶとさ持つ小池氏である。7月に予定される都知事選までに、どのような工作を仕掛けて来るか予断は許されない。今まで小池都知事に甘かったマスコミの動向も気になる。将棋で言えば詰みの局面だが、本人は内心悩んでいても、表向きは平然と構えて、学歴詐称を認めないだろう。彼女の粘りが果たしてどこまで持つか、今のところ誰もわからない。

さて同誌には「カイロで共に暮らした友への手紙」というタイトルで北原百代さんの文章も掲載されている。『女帝』で早川玲子という仮名を使った本人である。昨年の11月、『女帝』が文庫本になるとの連絡を受けた北原さんは、「仮名だから信じられない」とネット上で批判されてきた疑念を払拭するために実名を名乗る決心をしたのだ。同時にそれは、東京都知事という政治権力を握った小池氏側からの、あり得るかも知れない報復に対する恐怖心を乗り越えるための決意表明でもあった。

『女帝』を読んだ人間なら、北原さんのこの手紙になんとも言えない感動を覚えるのではないだろうか。ぼくが下手に解説するよりも本人に語ってもらうのがいいだろう。最後の箇所だけ引用する。

「『女帝』が異例のベストセラーとなっても大手メディアは学歴詐称問題を真剣に取り上げませんでした。それだけではありません。出版後に突然、「カイロ大学の声明」が出ると、それだけを報じたメディアもありました。なぜ権力者の味方をするのか。声明文が出た後、ますます、ネットでは「だから仮名の証言者なんて信じられないんだ」と、バッシングは強まっていった。私は絶望と恐怖を、余計に強くしました。同時に、あなたが都知事選で再選を果たすのを、ある種、諦めを持って見ていました。

それから三年が経った二〇二三年十一月。『女帝』が文庫本になると連絡を受け、私は自分から「この機会に実名表記に切り替えてください」と言いました。「仮名だから信じられない」と言われてきたので、実名にしようと決心したのです。メディアはどうしたら報じてくれるのか。ここまでしたらメディアは報じてくれますか。そんな必死の思いで、実名を出すのを選択したのです。

百合子さん、私はあなたの嘘に苦しめられてきました。この苦しみを、どうかわかってください。そして、百合子さん、あなたも長年、実は苦しんできたのではないですか。なぜそんなに学歴にこだわったのでしょうか。中卒でも高卒でもいいじゃないですか。大切なのは、政治家として何を成すかです。でも、難関大学を卒業したと言いたいのなら、きちんと勉強して卒業しなければいけません。出てもいない大学を、「卒業した」と言ってはいけない。どうかこれ以上、罪を重ねないで欲しい。政治家として働き続けるのであれば、本当の経歴で勝負してください。これが百合子さんへの、私からの最後のお願いです。」

小池氏の学歴詐称問題は、北原さんも言っているように、実はメディアの在り方の問題でもある。22歳の若い小池百合子が、父親の呼びかけでカイロから東京に一時帰国した際、カイロ大学を主席で卒業したと言う彼女の言葉を信じ込んだマスコミ各社が、何の疑念も抱かずに一斉に報道したために、その後の彼女の人生が大きく狂ってしまった。若いとは言え、平然と嘘をついた小池百合子の罪は大きいが、確認する努力もせずそのまま記事にしたマスコミも同罪である。

自分が犯した罪の重大さに気づき、すぐにでもあれは嘘でしたと打ち消しておけば、軽い傷で済んだはずなのに、小池百合子は大法螺吹きで有名だった父親の影響が強かったせいか、大変な野心家であったために学歴詐称という時限爆弾を抱えたまま突っ走ってしまった。22歳の時のマスコミの対応、都知事2期目の選挙の時に浮上した学歴詐称問題に対するマスコミの対応の不徹底さが小池氏を安心させ、虚偽体質を助長させた罪は大きすぎる。

小池都知事は北原さんの手紙を読んでいるはずだ。しかしつい先日、彼女は東京15区補選で出馬する乙武洋匡候補者の応援演説をした。これで学歴詐称を認めないことがはっきりした。七月の都知事選に向けて彼女がどう立ち回るか、そしてマスコミがどう対応するか、引き続き注目したい。