沖縄よ! 群星むりぶし日記

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アメリカの世紀の終わりを決定づけるウクライナ戦争

第二次世界大戦後の世界を事実上支配してきたアメリカ。政治、経済、軍事、あらゆる面で他国を圧倒し、欲しいままに繁栄を謳歌してきたアメリカ。20世紀は明らかにアメリカの世紀だった。しかし、そのアメリカが今、大きな音を立てて軋み始めている。現在進行中のウクライナ戦争がアメリカの世界支配の不当性・欺瞞性を明らかにしつつある。

第二次世界大戦後、世界で起きた大きな戦争全てにアメリカは直接関与してきた。朝鮮戦争ベトナム戦争イラク戦争、アフガン戦争。第二次世界大戦が終わってから、これだけ大規模な戦争すべてに関わった国はアメリカだけである。しかもいずれの戦争もアメリカは軍事力で圧倒的に優勢であったにもかかわらず、勝利をおさめた戦争はひとつもない。

反共、反独裁、自由と民主主義という名目上の大義を掲げて戦われた筈のこれらの戦争は、いずれもアメリカが望んだ形では終息していない。

朝鮮戦争の結果は、今だに北朝鮮と韓国が南北に分かれたままだし、ベトナムは米軍が敗北して本国へ引き上げた後、南北統一を成し遂げて社会主義国家となり、治安は安定して経済は順調に推移している。イラクフセイン独裁政権が統治していた頃に比べると治安は大いに乱れ、いまだに収拾がつかない不安定な状態が続いている。この戦争で決して勝利したとは言えない米軍はイラク国内に駐留したままだ。20年にもわたって戦闘が続いたアフガニスタンでも米軍は最終的に敗北を喫して、旧来通りタリバンが支配するところとなった。

振り返るまでもなく、誰の目から見てもアメリカの戦争はすべて米軍の敗退で終わり、大失敗だったと結論づけても文句は言えないはずだ。そして肝に銘じて忘れてならないことは、米国はいずれの国に対しても自国の非を認めず謝罪しないばかりか、反省すらしていないらしいという事実である。反共、反独裁、自由と民主主義を大義として掲げれば、いかなる戦争も許されると、米国歴代の権力者達は本気で信じているのだろうか?

罪なき多くの人々を苦しめ死に至らしめた、この米国の謂れなき傲慢とも呼べる非道徳的で鈍感な体質は一体何処からくるのだろうか? 原因はいろいろと考えられるだろうが、一つには世界に冠たる経済大国という側面を挙げることができるだろう。そのことについて少し考察してみたい。

米国の経済を飛躍的に押し上げた第一次世界大戦。そして米国を世界で唯一のスーパーパワーとして登場せしめることになった第二次世界大戦での経済のさらなる飛躍。

まず第一次世界大戦について考えてみる。第一次世界大戦は短期間で決着するだろうとの各国の楽観的な予想に反して4年間も続いた。そのため、英、仏、独をはじめとするヨーロッパ各国の軍事物資は極端に不足し、参戦前の米国はこの機会に応じて大量の武器弾薬と生活必需品を、参戦国各国に供給したのだった。膨大な軍事物資を賄うだけの供給能力を、重工業生産力で英国を抜き去っていた当時の米国はすでに持っていた。

平和時の経済において、需要と供給がうまく噛み合って回転すれば、それぞれが互いに良い影響を及ぼし合って、経済は全体的に向上する。しかし、歪な形態を取る戦争時の経済はそうはならない。ヨーロッパ各国は武器弾薬・生活必需品を破壊・消耗するだけで新たな生産に振り向ける資産は無くなる。一方、ひたすら供給する側の米国は莫大な利益を手にすることができる。

つまり、物資を生産して供給するベクトルは、受けた側が破壊して消耗するだけで新たな生産に結びつくことはない。戦争時の経済は需要と供給の双方向性を失った一方通行だけで終わるという歪な形をした不健全極まる経済形態であることが理解できる。

米国は、大戦終了間際に参戦する間に、歪で不健全な経済で莫大な利益を得た。ヨーロッパ各国は破壊され尽くされて疲弊し、米国だけが破壊を免れて繁栄を謳歌した。ヨーロッパ戦線から遠隔の地にあるという地政学的要素も米国に幸いした、ということもできるだろう。

その後も米国の繁栄は続き、1929年の株の大暴落を引き金に起きた世界大恐慌もなんとか乗り越えて、あの忌まわしき第二次世界大戦を迎えることになる。

第二次世界大戦は、先の大戦同様、米国の経済をさらに大きくして、世界の覇者として確立する決定的要因の一つとなった。この大戦においても米国は、真珠湾を攻撃されただけで、本土は無傷のままで済んだ。

世界各国が程度の差はあれ、本土が破壊されたことを考えると、米本土の無傷は特筆されるべきだろう。世界中の産業が破壊され再建に時間をかけている間に、米国だけはさらに繁栄して経済力、軍事力、政治力を強大化に向かわせたのが第二次世界大戦だった。

世界の覇者となった米国が、戦後、ますます傲慢になったのは当然といえば当然かもしれない。国際社会はパワーゲームだからである。しかし、とは言え米国はあまりにも図に乗りすぎた。この過度の自信が米国の世界戦略を誤らせたのだ。

第一次大戦、第二次大戦と米国は両大戦において、戦争が儲かることを学んだ。戦争が儲かることを名実ともに実感したのは、おそらく世界で米国だけではないだろうか。だからこの成功体験を基盤とした軍産複合体というモンスターが戦後の米国に姿をあらわしてきたのだ。

モンスターは呟く。戦争は儲かる。しかし、武器弾薬をできるだけ多く速やかに消費してもらわなければ利益は生まれない。ゆえに軍産複合体が生き延びていくためには戦争をする必然性がある。強大化したモンスターの呟きに政治権力者達は耳を傾けて、できるだけその要望にそうように行動する。もちろん、本音は政治献金が欲しいからだ。

戦後の米国の世界戦略を考える際、軍産複合体抜きで考えることは不可能である。先にも述べたように、朝鮮戦争ベトナム戦争イラク戦争、アフガン戦争はやる必要のなかった戦争である。北朝鮮が、北ベトナムが、イラクが、アフガニスタンが米国を侵略したのか?

違う、侵略したのは、米国である。勝手に他国に大軍を投入したのは米国である。錦の御旗として掲げた反共、反独裁、自由と民主主義という大義は、名目上のプロパガンダに過ぎなかった。真実は軍産複合体を儲けさせるための戦争ビジネスに他ならなかった。米国が起こした戦争をどれほど検証しても、そんな答えしか出てこない。

これが戦後米国が関わった戦争の実態だが、大きな内部矛盾を孕んでいる事実に注目する必要があるだろう。第一次、第二次世界大戦は、米国が一人勝ちした戦争だった。第一次世界大戦ではほとんど無傷で莫大な利益をせしめて米国に空前の繁栄をもたらした。第二次世界大戦は、太平洋戦争で大量の死傷者を出したが、勝利をおさめたことで帳尻を埋め合わすことができた。日本列島に散在する広大な米軍基地、NATOの拡大を見れば、その意味が理解できるだろう。

しかし、先に触れた朝鮮戦争以降の戦争は2つの世界大戦とは様相を異にする。米軍は大量の死傷者を出したにもかかわらず、すべての戦争で敗退・敗北した。つまり戦後の戦争は2つの世界大戦と違って、米国にとっては、いずれも割に合わない戦争だったのだ。

とは言っても、相変わらず軍産複合体は莫大な利益を計上している。大量の死傷者と軍産複合体の莫大な利益。大量の死傷者を負とすれば、軍産複合体の莫大な利益は正と規定できる。巨大な負と正が一国の中に同時に存在する、というどうしようもない現実。戦後、米国が抱え込むことになった大きな内部矛盾。

この巨大な内部矛盾を解決しない限り、米国の世界戦略が上手くいくことはないだろう。というより、そもそも成立しないだろう、という方がより正確かもしれない。問題は米兵の死傷者を無くすにはどうすれば良いか、あるいはできるだけ最小限に抑えるためにはどうすれば良いか? 米兵の死傷者を出さずに、軍産複合体の利益を上げる方法は?

政治の上層部の連中がそう考えても少しも不思議ではない。答えを見つけるべく戦略の転換が検討される。おそらく長い時間をかけて検討されてきたはずだ。

その答えを示す模範的戦争が今、進行中である。ウクライナ戦争の背景と進行状況を見る限り、米兵の死傷者を出さずに軍産複合体の利益を最大限追求する、という米国がずっと抱えてきた内部矛盾を解決する理想的な回答を見ることができる。

ウクライナ戦争が米国によって仕掛けられたのは、2014年に起きたクーデターだった。親露派のヤヌコヴィッチ大統領を追い落とすために米国が仕掛けたマイダン革命と称されるクーデター。身の危険を感じてロシアに逃亡したヤヌコヴィッチ氏にとって代わって大統領に就任したのは、ポロシェンコという親米派の人物だった。

この政変をきっかけに、ロシア系住民に対する露骨な抑圧政治がはじまり、ロシア系住民が多く住むドンバス地方で紛争が激化する。当時、米副大統領だったバイデン氏は、その間何度もウクライナに入ってロシアを挑発するような言動を繰り返している。

ネオコンビクトリア・ヌーランド女史もウクライナの政治家達に対して、反露活動を展開している。同時にその頃から米政府は、大量の兵器と軍事顧問団を送り込んでウクライナ軍を軍事訓練している。これらの事実は、ロシアが軍事侵攻してくるための呼び水を用意する仕掛けであった。

バイデンが大統領になって、いよいよ長年にわたって用意周到に仕掛けられ積み上げられた罠が極限状態に達する。2014年のマイダンクーデター以来積み上げられてきた米政府の罠を知悉しながらも、プーチン大統領は、覚悟を決めて昨年2月、特別軍事作戦を敢行したのだった。

ウクライナ戦争の背景を深く読み解くならば、ロシアの軍事侵攻は自衛のための行動であったことがわかる。自衛戦争という大義がある限り、この戦争でロシアが負けることは考えられない。最終的に核兵器を使うことになっても、ロシアが屈することはあり得ない。

さて、現在進行中のウクライナ戦争。米国は兵士を送る代わりに大量の兵器を供給している。この実態は、先ほど指摘した米国が抱える巨大な内部矛盾を解消する構図になっていないだろうか? つまり、兵士の死傷者を出さず軍産複合体の利益を追求する、という構図になっていないだろうか?

答えはウイである。米政府はついに、自国兵士の死傷者を出さず、軍産複合体の利益だけを追求するという理想的な戦争を作り出すことに成功したのだ。流石に世界一流のビジネス国家!

と讃えたいところだが、そうはいかない。米国のこの戦略は確実に失敗に終わるだろう。米政府のこの勝手すぎるやり方は、時間の経過とともに世界的にしっぺ返しを喰らうことが予想される。米国の兵士は死なずとも(兵士を投入しないから当然)、ウクライナ兵士は大量に死んでいるし、これからも死んでいくのだ。兵士だけではない、住民が殺され大量の国民が国外に逃れている。苦しむのはウクライナ人とロシア人だけで米国国民はなんの痛手も受けないのだ。

しかも大量の兵器を送り込む軍産複合体は莫大な利益を稼ぐ。こんな不道徳極まりない戦争が許されていいはずがない。ウクライナ戦争はまさに米国が仕掛けた不条理で理不尽極まりない悪魔の戦争である。ウクライナ戦争でアメリカの世紀は終わった。