沖縄よ! 群星むりぶし日記

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日米同盟に楔を打ち込むドラマシリーズ「沈黙の艦隊」

映画「沈黙の艦隊」をシリーズ化したドラマ全8話がプライムビデオで公開されている。その内の1〜6話までを、9日と10日にそれぞれ3話ずつ鑑賞した。7話と8話は17日に放映される予定だ。あまりにも面白い映画なので、17日が待ちきれない思いだ。

まず状況設定が凄い。日米共同で極秘に完成させた世界最強の原子力潜水艦シーバットの艦長に抜擢されたのは海江田という日本人である。冒頭のこの設定からして次の展開に固唾を飲んでしまう。初航海に乗り出したシーバットの艦内で、海江田は艦名を「やまと」に変え、世界に向けて独立を宣言する。世界最強の原子力潜水艦とその乗組員で構成される「やまと国」の誕生。

現実的に見て、こんなことが可能かどうか問いかけるのはナンセンスである。この物語はあくまでもフィクションであり、フィクションとして楽しめば良いだけの話だ。そしてフィクションは時として、現実を超えて真実を伝えることも、人間にとっては人類が誕生して以来の常識である。

海底を遊弋する世界最小の独立国家「やまと国」。外敵から身を守るのは世界最強の原子力潜水艦「やまと」のみである。世界最強の原子力潜水艦の艦長に海江田自衛官が抜擢されたのは、彼が超優秀な軍人としての資質を持っていたからであろう。日米の主従関係を考慮すると、米軍から抜擢されるのが極めて当然の筈だからである。

沈着冷静、緻密にして大胆な海江田艦長の目的は何か?

日本と同盟関係を結び、日米同盟に楔を打ち込む。そして日本を対米自立、真の独立国家に導く。それをバネにして世界平和を実現する。世界の誰も思い付かないような実に壮大な構想を、海江田艦長は思い描き、実行に移しているのだ。

当然アメリカは反発し、「やまと」を潰しに出る。「やまと」を撃沈せよとの大統領命令が米艦隊に発令される。全編が緊張感あふれるシーンの連続だが、「やまと」を護ろうとする自衛隊艦隊と、それと対峙する米第3艦隊、米第7艦隊との戦闘場面は、特に迫力がある。

「やまと」を撃沈するために米艦から発射された数発のミサイルを自衛艦のミサイルが迎え撃つ。しかし撃ち漏らしたミサイルの一発が護衛艦の一つに命中する。複数の負傷者が出る。明らかに日本に対する武力攻撃であり、専守防衛で反撃できる場面。

しかし、自衛隊の司令艦長は米艦への攻撃を思い止まる。思いもよらない同盟国による武力攻撃と、それに反撃できない自衛隊という、日米関係の矛盾を突くこのシーンは、我々日本人の心を強く揺さぶって離さない。しかし独立国「やまと」は黙っていなかった。第3艦隊の原子力空母を狙って魚雷4発を発射。見事に命中して巨大な航空母艦の船体が傾いていく。「やまと」は海域から姿を消す。

その後「やまと」は日本政府に対して同盟関係を結ぶ提案を行う。政府はそれを受け入れて、交渉の場所と日時が決められた。海江田やまと国元首と日本国総理大臣が交渉の席につく場面で第6話は終わる。

とにかく掛け値なしに面白い映画である。フィクションではあるが空想の域を超えて、現実の日米関係、不平等条約である日米安全保障条約の上に築かれた日米関係のあり方を深く考えさせてくれる。日本人の手になる戦争映画は、これまでに数多く作られてきたが、その中でこの「沈黙の艦隊」は、緊迫感、醍醐味、思想性、投げかける問題の深さにおいて、政治的に一頭抜きん出た作品だと思う。

多くの言論人がこの作品を取り上げて、大いに議論を展開してほしいと願う。対米自立は今なお、我々日本人にとって切実な問題だからである。