沖縄よ! 群星むりぶし日記

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三浦充喜著『翁長雄志元沖縄県知事の政治思想研究』を推薦する

中村之菊さんの「沖縄の米軍基地を東京へ引き取る党」について言及したことが縁となり、ある方から沖縄問題に関して意見交換したいとのコメントが寄せられた。そのコメントにはメールアドレスが付記されていた。

そこで建設的な議論をお望みなら当方としては何の問題もない旨のメールを送った。するとコメント氏の返信には、2年ほど前に故・翁長雄志知事の政治思想をまとめて自費出版したものを沖縄県立図書館に寄贈した、その本で翁長県政に対する左右論壇の姿勢を検証したが、このような試みが沖縄の人々にどのように受け止められるか気になるので、ご笑覧頂くことは可能でしょうか?とあった。

不思議な引力に導かれるように、県立図書館へ出かけて借りた本が『翁長雄志沖縄県知事の政治思想研究』である。199頁の新書版で2020年3月15日初版発行。副題には「本土人(やまとんちゅう)からの一回答」とある。著者は三浦充喜(みうらみつき)、コメントを書いた本人である。

早速その日から読み始めた。まず「はじめに」を読んで著者の姿勢に偏向が見られないこと、論究に欠かせない多くの資料を渉猟しているらしいことがわかり、身の引き締まる思いでページをめくっていった。

読み進むにつれて著者の探究心が本格的であることに感心し、知らなかった多くの事実を教えられる思いと同時に、著者の見解がぼくの見解と不思議なほど一致していることが分かって驚き、そして嬉しくなった。

翁長氏の政治思想について言えば、同氏が書いた『戦う民意』がぼくの全知識である、とまずは告白しておく。そして、研究者でもない自分にとっては、それだけで十分だと思っていた。しかし、三浦氏の著書を読むことで、『戦う民意』が幾層にも補充・補強されて、翁長氏の政治思想の全体像が浮かび上がってくることが視野に入ってきたのである。

第一章 市長時代の発言に見える思想の一貫性と言葉の昇華

において、三浦氏は翁長雄志那覇市長時代の行動と発言に焦点を合わせて翁長氏の政治思想の萌芽を見、当選回数を重ねるごとに「協働のまちづくり」から「誇りある豊かさ」へと政治理念が昇華していく過程を描く。そしてここが重要な点だが、那覇市長時代からすでに翁長氏には保革合同の精神が確立していたことも検証されている。

第二章 地方自治を訴えた県知事時代

那覇市長時代、翁長雄志普天間飛行場辺野古移設に賛成の立場だった。しかし、それはあくまでも稲嶺恵一知事が政府との間で約束した軍民共同で15年期限付き、という条件が了承されていたからだ。

しかし、いつの間にかその条件は取り払われて交渉が進み、政府と県、そして名護市の間で虚々実々の難交渉の結果、現行案に決まったという経緯を忘れるわけにはいかない。

それで翁長那覇市長は、軍民共同で15年期限付きという条件が外されたために、賛成から反対の立場に回って2010年の県知事選で仲井真弘多の選対本部長を務め、仲井真知事再選に貢献したのだった。この時、仲井真知事は辺野古移設反対の立場だった。しかし、2013年12月、一転して賛成を表明。

そこで翁長氏は反対の立場から知事選に出馬することを決め、2014年、仲井真知事に10万票の大差をつけて当選した、という背景も思い起こす必要があるだろう。

第二章では、県知事としての翁長氏の発言を検証しながら、翁長氏の政治思想の本質に迫っていく。保守と革新を統合するという翁長氏の理念の根底には強烈な郷土愛が横たわっている。この郷土愛抜きで翁長氏の政治思想を理解することは不可能だ。

三浦氏は、幾つもの対談、インタヴュー、シンポジウムにおける翁長知事の発言を取り上げて具体的に検証しているが、その内容と調子には、やはり翁長知事の郷土愛が滲んでいる。

三浦氏が取り上げている対談、インタヴュー、シンポジウムをここで紹介すると長くなりすぎるので止めるが、翁長知事が地方自治をいかに重要視していたかを三浦氏が指摘している箇所があるので引用したい。

「以上の様に翁長氏の知事任期中の国連演説、うるま市女性暴行殺害事件、辺野古訴訟といった問題に関する発言を見てきた。その中で一貫しているのは、いずれも地方自治の視点を提示していることである。同時に、それが蔑ろにされる事は沖縄のみならず日本の民主主義の危機であるとしている。また、先述した様に自治研中央推進委員会室長のインタヴューで、その危機意識を全国の自治体で共有してほしい旨を語っている。この様に翁長氏が沖縄の地方自治と日本の民主主義を不可分のものと捉えていた事は重要であると思う。」

第三章 左右論壇を検証する

この本でぼくが最も楽しく読んだのはこの第三章である。翁長氏が県知事に就任してから沖縄の自称保守と本土保守からのバッシングは、見るに絶えないほど酷いものがあった。そのほとんどは論理性に欠け、偏見と先入観に捉われたもので扇情的特質で共通していた。

我那覇真子、仲新城誠、仲村覚、惠隆之介、篠原彰、各氏が俎上に乗せられて、三浦氏の鋭いメスで切り裂かれる様子は、読むだけで爽快になり溜飲の下がる思いがした。

実は、当ブログを書く動機がチャンネル桜「沖縄の声」から発せられる左翼バッシングだった。筋の通った左翼批判なら目を瞑ってやり過ごすこともできる。しかし、彼らの論調はそれだけに留まらず、沖縄を貶めるレベルまで達している。流石にこれには我慢できず、反対の立場から論陣を張ろうと思いブログを書き始めたのだった。

直接のキッカケは「沖縄の声」に又吉康隆がキャスターで出演していたことだった。彼の言論があまりにも酷すぎる。対米従属の立ち位置から沖縄を批判している。許せないと思った。しかも彼は琉大の先輩でよく知っている人物だ。その彼が「沖縄の声」で信じられない様な発言を繰り返している。大学時代の彼ではない。こうも人間が変わるものかと驚いた。

だからぼくは、このブログで何度も又吉批判を書いた。全部で13回ほどになるだろうか。徹底的に批判したつもりだが、しかし3年半ほど前から熱は完全に冷めた。どうしようもない人間だと完全に見切ったからだ。彼について書くことは、この先もうないだろう。

さて、又吉康隆が直接のキッカケとなって「沖縄の声」を批判するようになったわけだが、特に我那覇真子に対する怒りは尋常ならざるものがあった。過去、何度も彼女を批判してきたので、ここで改めて批判しようとは思わない。

そこで三浦氏の彼らに対する批判に戻ると、その論調は、決して感情的にならず、具体的事例を提示して冷静に論理を組み立てていることが理解できる。明晰で具体的だから説得力がある。その力量にはほとほと感心させられた。嬉しさのあまり感謝したいくらいだ。

あなたの本棚に一冊置いてみるのはいかがだろうか。それだけの価値ある本だと確信する。ご購読を心から強く推薦したい。