沖縄よ! 群星むりぶし日記

沖縄を、日本を、そして掛け替えのない惑星・地球を愛する者として発信していきます。

揺らぐ沖縄のアイデンティティ

昨日投開票された浦添市長選挙の結果は次の通り。

  • 松本哲治 33,278票
  • 伊礼悠記 22,503票

1万票を超える大差で自民・公明党が推薦する現職の松本哲治氏が当選した。大差に終わった決定的な要因として考えられるのは、伊礼悠記候補の立候補表明が遅れたこと、そのため2期8年間市長を務めた松本氏の知名度にとても及ばなかったということ。

準備不足と知名度の差があったことは紛れのない事実である。しかし、この選挙で最も注目しなければならないことは、那覇軍港の浦添移設をめぐる玉城知事と伊礼候補の政策の違いである。

伊礼候補は那覇軍港の浦添移設反対を公約に掲げた。玉城県政を支える県議会の全与党は伊礼候補を支持。しかし、玉城知事は移設容認の立場である。玉城知事と城間那覇市そして松本浦添市長は移設で合意を交わしている。

この複雑な構図を見ないと、今回の浦添市長選挙の真の姿を見誤ることになる。伊礼氏は玉城知事の容認の立場を知っていながら何故、あえて移設反対を公約に掲げたのか?

それは県政与党の一角を占める共産党の主義主張に政策を合わせるためだ。共産党の主張は、移設反対でずっと一貫していた。普天間飛行場辺野古移設同様、那覇軍港の浦添移設は米軍(占領軍)施設の県内たらい回しに過ぎず、負担軽減どころか基地機能強化につながる。

しかも辺野古移設も浦添移設もかけがえのない沖縄の美しい海を埋め立てて他国の軍事施設を新たに造るなんて言語道断であり、とても容認できるものではない。これが共産党の主義主張であり、一貫してぶれることがない。

ぼくはこの問題に関しては、共産党の主張に理があると思う。辺野古移設に反対して浦添移設は容認する。誰が考えても明らかに矛盾している。玉城知事が何故容認したのか、その真意はわからないが、明らかに間違っている。

翁長雄志前知事も容認していたから、玉城知事はそのまま前知事の立場を受け継いだだけかもしれないが、仮にそうだとすれば、あまりにも主体性がなさすぎる。翁長前知事もそうだったが、玉城知事は、辺野古移設反対・浦添移設容認の矛盾点を野党から指摘されて、納得のいく答えを出せないままだった。

だからやむなく「オール沖縄」推薦の伊礼候補を応援する演説で浦添移設について言及することはなかったのだ、というよりもできなかったのだ。

そして与党である「会派おきなわ」は玉城知事の行動に激怒し、投開票の2日前5日に4月に予定されている、うるま市長選では自民推薦候補の支援を表明したのである。

オール沖縄」勢力に亀裂が走った瞬間である。その予兆は玉城県政になってから常に存在していた。「オール沖縄」は全左翼勢力と保守の一部で構成されている。

オール沖縄」の誕生は6年前に遡る。辺野古新基地建設予定海域の軟弱地盤が、まだ明らかにならない頃、仲井真弘多知事は公約を破って、埋め立て申請を許可した。県民は激怒した。

仲井真氏と仲の良かった翁長那覇市長も県民と怒りを共有し、1年後の県知事選を見越して辺野古移設反対の勢力を結集するために動きはじめた。翁長氏の強いリーダーシップのもと、保守の一部と全左翼が連合して自公連立勢力に挑戦するという、沖縄県政史上初めてとなる政治勢力が出現したのだった。マスコミはこの勢力を「オール沖縄」と名付けた。

この頃、翁長氏は名言を残している。

イデオロギーは、腹八分六分に抑える」「イデオロギーよりもアイデンティティー」

オール沖縄」では最左翼の共産党を意識しての発言であることは間違いない。翁長氏の言葉を共産党がどの程度真摯に受け止めたかは定かではないが、県民の心を奮い立たせたのは確かだ。「イデオロギーよりもアイデンティティー」。これは米軍(占領軍)基地に反対する県民の情念を原点に引き戻す言葉である。共産党もきっと、強く心を動かされたはずだ。

沖縄は燃えた。自民公明推薦の仲井真氏に10万票もの大差をつけて翁長氏は県知事選を制した。こうして新しい政治勢力は翁長知事の卓抜なリーダーシップのもと一丸となったのだ。

沖縄に対して圧倒的な力を持つ中央政府の有無を言わせぬ押しつけ。「粛々と進める」(官房長官(現・総理)

県民の心を逆撫でするような安倍政権の手法に対して翁長知事は少しも怯まなかった。翁長氏の郷土愛が本物である証拠である。

「ウチナーンチュ、ウセーラッテーナランドウーサイ」(沖縄の人よ、馬鹿にされてはいけないよ)

この言葉は県民の合言葉になった。志半ばで病に倒れた翁長氏が残したこの言葉は、今もぼくの心の中にしっかり根付いている。多くの県民と同じように。

さて、今回の浦添市長選挙。「オール沖縄」に亀裂が生じたのは残念だが、政治は100か0で割り切ることはできない。大きな視野に立つ時、必ずどこかで妥協せざるを得なくなる場面が出てくる。

今回3選した松本氏は、8年前は浦添移設反対を公約に掲げて立候補し、当選した経緯がある。しかし時の経過と共に理想と現実は複雑に絡み合い、状況によって公約を守れなくなる場合もある。再選された松本市長は、1期目の公約を破棄して移設容認に転じた。

当然市民の期待を裏切ることになる。批判が増え支持者は減った。しかし、松本市長は自らの信念に従い、市民との対話を欠かさず地道に政治活動を続けた。彼の活動の質がどのようなものであったか、今回の1万票を超える大差の選挙結果が証明したと思う。

そこで、選挙のたびにぼくの心をよぎるのは、我々ウチナーンチュは何と重い荷を背負わされているのだろうか、という言葉にならない無念さである。

我々の許容限度を超える米軍(占領軍)基地の押し付け。基地面積の4分の3を占める海兵隊が撤退しても嘉手納基地が残るだけで、十分すぎるほどの軍事抑止力を維持できるのに、歴代政権は、未来を見据えた安全保障体制の本格的議論を怠ったまま、無為の時間を費やしてきたばかりに、主体性を発揮できずに身動きが取れず、半身不随状態のままだ。

そのために現場は苦悩から抜け出ることができないのだ。松本市長が公約を破棄して移設容認に転じたのも、玉城知事が与党内に亀裂を生む要因となるにもかかわらず移設容認するのも、また伊礼候補が勇気を出して移設反対したのも、全ては苦渋の選択なのである

沖縄の苦しみの原因は我々ウチナーンチュにあるのではない。しっかりとした安全保障の理念を構築できない不甲斐なき中央政府にこそ責任があるのだ。

政権交代が起きず今の状態が続けば、我々ウチナーンチュの苦悩が消えることはないだろう。ただ言えることは、どんな事になっても、ウチナーンチュとしてのアイデンティティを見失わない事だ。そして広い視野に立ち、できるだけ県民同士で争わない事だ。

 

推奨サイト

 チョイさんの沖縄日記 

Osprey Fuan Club ネトウヨ対策課 

三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへ blog」

れいわ新選組