アメリカの属国を脱しない限り日本の衰退は止まるところを知らない:ロシア制裁は百害あって一利なし
日本政府の外交能力の沈下は年々酷くなる一方だ。主権国家としての日本独自の主体性が微塵も感じられない。
ロシア軍のウクライナ侵攻を受けて、岸田首相は米国に足並みを揃えるようにして、種々の対ロシア制裁に踏み切った。ウクライナを善、ロシアを悪と明確に区分けした結果だ。あまりにも短絡的で未熟すぎる外交姿勢と言わなければならない。
日本には、欧米諸国と違って、日本独自の外交を展開する有利な条件が揃っているはずなのに、なぜわざわざ欧米諸国に追随する必要があるのか?
日本からはるかに遠いところで起きた今回のウクライナ危機は、我が国にとって差し迫った緊急事態ではない。日本は欧米諸国と違いNATOに加盟していない。ならば、冷静に判断できたはずだ。ここは冷静に判断して、対ロシア制裁ではなく、ウクライナとロシアの停戦を促す外交に専念すべきだった。
日本独自の国際的立ち位置を最大限に活かして、勇気を振り絞って、あえて戦火に飛び込んで、プーチン大統領とゼレンスキー大統領と個別に会談する。そして両者をつなぐ努力を重ねる。たとえ上手くいかなくても、懸命に外交努力を続ける日本の姿に、世界各国は高い評価を下すことだろう。
言い方は悪いが、ウクライナ危機は、日本にとって世界のど真ん中で日本株を上げる千歳一遇のチャンスだったのだ。それなのに、岸田首相は何を血迷ったのか、熟慮もせずに慌てふためいて、外交としては最悪の対ロシア制裁に踏み切ったのである。
- 2月27日:欧米諸国の要請に応じ、ロシアの一部銀行を国際銀行間の送金・決済システムであるSWIFTから排除する制裁に加わると岸田首相が表明。
- 3月1日:プーチン大統領など6人への個人資産とロシア中央銀行が日本国内に持つ資産の凍結を発表。
- 3月16日:ロシアに対して貿易上の優遇措置などを保障する最恵国待遇からの撤回を表明。
- 3月18日:半導体、半導体製造装置などの輸出規制が実施。
ウクライナ危機は、日本とは直接関係ないにも関わらず、短絡的に悪と認定したロシアに対して、一方的にこれだけの制裁を行使すれば、やられた方は黙っているはずがない。
ましてやプーチン大統領は、100年に一人出るか出ないかの明確な判断能力と決断力を持つ稀有な政治家である。間髪を入れずに反応した。ロシア外務省は次のような声明を公表した。
「日本による一方的な規制措置は明らかに非友好的で、現在の条件下では日本との平和条約に関する交渉を継続するつもりはない。1991年から続く南クリル諸島(北方領土)の元島民らによるビザなし交流の事業を停止することを決定した。また、平和条約交渉の前進に向けた南クリル諸島における共同経済活動に関する日本との対話から離脱する」
これでは踏んだり蹴ったりである。欧米諸国と足並みを揃えてロシアに制裁を課した結果、今、世界中でガソリンをはじめ食料品が値上がりしている。日本を含めて、世界中の低所得層の人々が家計を直撃されて苦しんでいる。
しかも対ロシア経済制裁は、ウクライナ危機を終息させるどころか、ますます長期化させるだけである。それだけではない。岸田首相はまた、ウクライナに対して資金援助をし、自衛隊仕様の防弾チョッキと市販のドローンを供与した。欧米諸国の顔色を窺いつつ。
嗚呼哀れなり、日本の主体性なき外交。岸田首相の顔が、能面のようなのっぺらぼうに見えてきたのは、果たしてぼくだけだろうか?