「れいわニューディール」に加えて欲しい2つの政策
れいわ新選組は「れいわニューディール」と称する公約を掲げている。その内容は以下の通り。
日常の負担を軽減
- 消費税の廃止(毎日が10%オフ!)
- デフレ脱却給付金(インフレ率によって変動する給付金)
- 社会保険料負担軽減(まずは国費投入額を倍に)
- 「住まいは権利!」安く住めて追い出されない家(家賃補助・民間住宅借り上げなど)
- 子供の貧困をなくす(児童手当を2倍、毎月3万円支給)
- 教育費タダ・奨学金チャラ(教育への負担はなし、借金はチャラに)
- 少人数学級の実現(教員の増員・教育の質を高める)
- 生存を保障する制度(生活保護をばらで受けられる、困る前に頼れる、積極的に受給できる制度に)
- 全国一律!最低賃金1500円(中小企業には政府が補償)
- 農業・食の安保を徹底的に(徹底した国の買い上げで生産者の所得安定、自給率向上)
雇用・処遇の改善
- 安定雇用1000万人!ロスジェネに安定を(他にも非正規労働者など、希望する人に安定した雇用を保障)
- 介護・保育の月給10万円アップ(国費年3.6兆円)
- 非正規公務員の正規化
- 医療従事者の処遇を大幅に改善(夜勤含む超過労働の軽減、給与など処遇を大幅に改善)
- 働く人を徹底的に守る(雇用の流動化・規制緩和をストップ、派遣法見直し、長時間労働の規制など)
これらの政策が実行されたら、日本経済は間違いなく負のデフレスパイラルから抜け出して、30年ぶりに再び経済成長の道を歩みはじめるだろう。そして多くの国民が生活苦から解放されるだろう。底辺に広がる貧困層は消え、再び分厚い中間層が形成されることだろう。
この夢のような「れいわニューディール」を裏付ける財源は積極的財政出動(国債発行)だ。その可能性について、山本太郎代表は参議院調査室がシュミレートしたデータを示しながら、街宣活動を通して執拗に訴えてきた。
山本代表の主張は、多くの積極財政派の経済評論家が主張する理論と全く同じである。インフレ率を監視しつつ財政出動すれば何も問題はない、政府の借金と称するものは政府が発行した国債の単なる記録に過ぎない、という貨幣論だ。海外では現代貨幣論(MMT)と呼ぶらしい。
長い間、異端視されたこの貨幣論は、まだ少数派とはいえ、近年どうやら市民権を得たのは間違いないようだ。自国通貨を発行できる政府が、インフレ率を監視しつつ国債を発行して自国内で消化する限り、財政破綻はあり得ない。
この貨幣論が及ぼす影響は限りなく大きい。資本主義の横暴、歪みを修正し健全化する鍵をこの貨幣論は握っているようにさへ思われる。その可能性をいち早く嗅ぎ取った山本太郎という異端児は、この貨幣論を武器に2年前一人で「れいわ新選組」を立ち上げた。全国を駆けまわり、日本は財政破綻はしない、悪性インフレにならない限りどれだけ財政出動しても構わない、とブチ上げたのである。
貧困に苦しむ多くの人々をなんとか救いたいと願う彼の激情が、究極の解決策として、この新しい貨幣論に彼を引き合わせたのだ。それ以来、彼の超人的な行動と訴えは、少しずつではあるが確実に各層に影響を与え始めている。その兆候が随所に見られるようになった。
消費税減税に対し頑なに沈黙を守っていた枝野幸男が、ついに消費税5%減税を言い始めたのはその一例だろう。そして目下ヒートアップしている自民党総裁選。
岸田文雄と高市早苗両候補は財政出動を主張している。これは明らかに山本太郎が盛り上げてきた大々的な積極的財政出動の発言が影響しはじめたからではないかと、ぼくは推測する。高市候補について言えば、昨日届いた『美しく、強く、成長する国へ』の中に書かれた多くの政策を実現させるためには税だけでは到底無理で、どうしても国債発行が必要になる。
だから彼女は、インフレ率2%に達するまではPB(財政規律)を凍結して、国債発行で財源を賄うと宣言したのだ。これは自民党の総裁候補としては極めて異例な思い切った発言である。やはり山本太郎の主張の影響が感じられるのだ。積極的財政出動を打ち出さないと、次の選挙で不利になるとの思惑が働いたに違いない。ただし、山本太郎と高市早苗の着眼点が大きく食い違う点は指摘しなければならない。
安い賃金と長時間労働に苦しむ人々、消費税の支払いに苦しむ多くの中小零細企業、まずこれらの貧困層を財政出動で底上げし、需要を増やして経済を循環させながら日本の経済成長を目指す、というのが山本太郎の主張。当然消費税は廃止。
半導体、産業用ロボット、マテリアル(素材)、量子光学、漫画・アニメ・ゲーム、これらの日本に強みがある技術分野に投資する。危機管理投資として、必需品の国内生産・調達、医療提供体制と検疫の強化、創薬力の強化、情報通信機器の省電力化研究開発・安定的な電力供給体制の構築。つまりは社会の上層部に投資して日本経済強靭化を目指す、というのが高市候補の主張。消費税は据置。
二人の性格の特徴がよく現れていると思うが、欲を言えば二人の政策が合体できれば理想的ではある。山本太郎は国防上の安全保障の面で線が細い。高市候補は底辺で苦しむ貧困層に対する思いが弱いように感じられる。二人の政策が合体すれば最強なのだが、政党が違うので実現は非常に厳しい、というよりはほぼ不可能。
さて新貨幣論を土台にして提案したい政策が2つあるが、これは高市候補は採用しないはずのものなので、「れいわニューディール」に付け加えてもらいたい政策だ。
- 医療費完全無料化
- 六十五歳以上の全国民に十分な年金を支給する
この二つが制度化されれば、多くの国民が老後の心配から解放されるのは間違いない。財源は保険料ではなく、税金を主としながらも足りない分があれば国債発行で補えば良い。
デンマークをはじめ北欧諸国ではすでに実施されていて、国民はその成果を充分満喫している。国民の生活満足度調査では、これらの諸国は常に世界のトップの座を占めている。
羨ましい限りだが、優秀な日本人にできないはずはない。政治家のやる気次第だ。そしてこの政策を取り入れてくれそうな政党は今のところ、れいわ新選組以外は考えられないので、あらゆる機会を利用しながら、これらの政策を提言し続けるつもりだ。