沖縄よ! 群星むりぶし日記

沖縄を、日本を、そして掛け替えのない惑星・地球を愛する者として発信していきます。

日本的資本主義の限界を突破するためのモデルは、デンマーク型社会システムにある

アベノミクスに対する評価は、それぞれ経済評論家の分析する角度によって異なる。失業率の低下、求人有効倍率の高水準、株価の上昇等を強調する評論家は高い評価を下している。これは、安倍首相の見解に追随する立場だ。しかし、別の評論家は次のように分析して、辛い点数をつける。失業率の低下は、人口の自然減少が大きく影響しているためであり、求人有効倍率が高いのは、正規社員よりもパート社員が増加した結果である、と。どういうことかというと、低所得層の増加に伴い、共働き世帯が増え、中には一人で複数の職場で働かざるを得ない現実がある、ということだ。実際のところ、大部分の国民に好況の実感がないのは、実質賃金が増えていないからであり、安倍政権の5年間で、実質賃金は下がっているという統計データもあるくらいだ。その理由のひとつとして、海外から多くの技術研修生を受け入れて、低賃金で雇っているためである、また、株価が上昇しているのは、日銀の金融緩和が原因であり、日銀が株を買い続けているからである、となかなか手厳しい評価を下す経済評論家は多い。経済指標は数字の上では、好況を示しているとしても、多くの国民にその実感が伴わない現状を考えると、後者の評論家の見解が正しいと言わざるを得ないのではないか。アベノミクスは、政府が自慢するほど良い結果を出しているわけではない、ということだ。そもそも、アベノミクスの手法そのものが問題であり、間違いだったと言える。大企業優先の施策を打ち、ピラミッドの頂上から下部の方へ徐々に利益を流していく、というやり方。これは、80年代後半、バブルが弾ける以前の古い手法であり、バブル崩壊以後は通用しない政策だ。時代が大きく動き、国際環境が複雑に変化する中で、古い思考で経済を良くしようとしても、上手くいくわけがない。野党時代、政権奪取に備えて、経済を猛勉強したという安倍晋三の頭はやはり、というか残念というべきか、少しも進歩していない。彼には、時代を突き抜ける発想力がないのだ。その発想力の貧しさは、日本の総理大臣として最も不向きな人物である、と極論したいくらいである。そして、その政治的能力は、ぼくが尊敬する田中角栄の十分の一もないだろう。田中角栄が今生きていたら、世人があっと驚くような経済政策を打ち出したに違いない。しかし、大天才・田中角栄を日本人は自らの手で葬り去ったのである。あの頃から、日本経済の凋落が始まったと、ぼくは見ている。それはさておき、日本と世界の政治状況を、長期間観察して気づくことがある。

それは、日本の経済システム、資本主義の構造そのものに限界があるのではないか、ということである。日本は戦後、米国に追いつき追い越せの精神で、自由経済・資本主義経済を推進してきた。朝鮮戦争の時、参戦した米軍の戦時需要を受けて経済に弾みがつき、それを契機に以後、右肩上がりの高度成長に突き進んでいく。終戦から僅か19年後には、東京オリンピックを開催するほどの実力を回復して、世界の人々を驚嘆せしめた。日本人の勤勉さと、民族の優秀さに、改めて世界中が瞠目したのだった。

田中角栄の手になる数々の議員立法が最大限効果を発揮して、経済成長は長期に渡って続いた。そして、ついに日本経済はバブル期を迎える。三菱地所がロックフェラービルを買い取った時は、日本人全員が束の間とは言え、平清盛の心境を味わったのではないだろうか。しかし、出る杭は打たれる運命にある。超大国米国が不信の目を向け始めた。生意気なジャップめ、ソ連が崩壊したら、次は日本を叩け!経済大国になったとはいえ、日本という国は所詮、駐留米軍が睨みを利かす極東の島国にしか過ぎない。太平洋の彼方からくる圧力は、在日米軍基地によって担保されている。バブル崩壊以後は、米国の露骨な圧力、ハゲタカファンドの暗躍も大きく影響して、日本の経済は凋落の道をひた走ることになった。自信をなくした多くの経済人、経済評論家は、今迄誇りを持って推進してきた、日本独自の終身雇用制度に、疑問の声を上げ始める。我々が自信を持って正しいと思った制度は、間違いだったのではないか。やはり、資本主義社会における世界標準ではなかったのだ。これからは、米国のやり方、米国の徹底した自由主義経済を取り入れなければ、日本は生き残れない。その頃から徹底した自由主義経済を主張する評論家たちが跋扈するようになる。日本の伝統習慣を時代遅れの遺物として、自由主義経済の足枷として排斥し、米国式経営方式を注入する。そのように主張する経済評論家たちの象徴的存在が竹中平蔵であった。彼は、小泉政権で経済財政政策担当大臣として活躍した。彼は、米国式自由主義経済の信奉者である。彼の理想は、日本の経済システムを米国式自由主義経済システムに改編することだった。しかし、結論だけ言えば、彼が中心になって進めた改革は、決して成功したとは言えない。

その成果は、どこにも見当たらないばかりか、日本の経済はバブル崩壊以降、ズルズル下降線をたどるだけである。バブル崩壊以降、なぜ日本経済は立ち直れないのか?はっきり言える事は、米国式自由主義経済を採用してはいけない、ということである。自由主義経済は、別名グローバル主義経済であり、その思想は、国境を越えて、人、物、金が自由に行き来することである。言葉だけでは、垢抜けした、誰もが憧れるような世界のように映るが、実は危険で、大きな落とし穴がある。国家間の規制を全部取り払って、人、物、金が自由に行き来できる世界とは、いったいどのような世界か?それは、制限のない自由競争の世界であり、強いものだけが勝利者となる世界である。自由競争である以上、そうならざるを得ない。当然のことだが、人が遠くへ移動する時、あるいは物を遠くへ移動させる時は、金が必要だ。この場合、移動手段は問わない。車、船、飛行機、とにかく金がかかる。そうすると、人、物、金が自由にどこでも行き来できる世界の勝者は、必然的にお金を沢山持っている者ということになる。これが世界規模で展開されると、最終的勝者は金融資本家ということに決まっている。その意味で、米国を発祥地とする自由主義経済、グローバリズム経済というのは、金融資本家にとって、実に都合の良い経済システムというべきである。そして、金融の世界というのはまた、強欲の世界でもある。「あらゆる商品は貨幣に恋をする」という名言は、カール・マルクスの言葉だが、まさしく資本主義の行き着く最終段階は、金融資本主義である。米国は、金融資本主義社会、すなわち、資本主義社会の最終段階にきている。全人口のわずか1%にも満たない金融資本家たちが、米国全体の富の約50%を握るとされる。これが米国社会の実態である。当然、豊かでない大衆の間から異議申し立てが出てくる。ドナルド・トランプという変わり者が大統領になった背景がそこにある。保守評論家によると、トランプ大統領反グローバリズムだとされる。トランプ氏が言うアメリカファーストはその表れだという。しかし、大統領になってからのこの1年の彼の発言を見ると、疑問を抱かざるを得ない。果たして強大な金融資本家たちに本気で立ち向かうことができるのか、米国を再び、中流階級の厚い社会に戻せるのか。ぼくは不可能だろうと予測するが、もう少し様子を見る必要があるかもしれない。いずれにしても、日本は米国式自由主義経済を模範にしてはならない。大多数の国民は強欲な金融資本家たちの餌食になるだけであり、日本社会はズタズタに引き裂かれて、永久に取り返しのつかない状況に陥ることになるだろう。

では我が国はどうすれば良いのか?日本の伝統文化を壊すことなく、経済を好転させ社会を安定させるには、いったいどうすれば良いのか?政治のあり方、社会のあり方を根本的に変革する発想が求められる。そのためのヒントがデンマーク型社会システムにある、とぼくは考えている。そのきっかけになったのは、「世界不思議発見!」というテレビ番組だった。デンマークについて放映していた。その内容に、ぼくは大いに感動し、デンマークについてもっと詳しく知りたいと思い、デンマークについて書かれた本を購入して読み始めた。その一冊が『消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし』である。角川SSC新書から出ている本で、著者のケンジ・ステファン・スズキ氏は、デンマーク人女性と結婚して、現地で生活している日本人である。読んで両目から大量の鱗が落ちた。言葉の純粋な意味で、国造りとはこういうことを指すのではないか、としみじみ思ったのである。日本と比較するのが恥ずかしくなるくらい、デンマークは素晴らしい国家である。デンマーク人が羨ましい、心の底からそう思う。まず、政治に対する国民の信頼の強さは、日本と比較にならないほどに桁違いだ。その理由は、社会のシステムそのものにある。消費税25%と所得税などを加算した、国民の税負担率は、なんと71%!もある。数字だけを見たら、大概の人は、とんでもない国だ、と鼻から相手にしないに違いない。政治不信の強い日本人は、できるだけ税金は納めたくない。できたらバレないように、納税額を少なくしたい、と考える国民がほとんどだろう。しかし、問題はその中身だ。納めた税金の大部分が還元されるのを、デンマークの人々は知っている。例えば、医療費はタダ、教育費もタダ、年金は充実している、介護制度も然り。つまり、日本人の心配の種である三大要素、医療費、教育費、年金制度(介護も含む)をデンマーク人は全く心配する必要がない。税金で全て賄われるからだ。老後の心配がないから、日本人のように貯蓄に励む必要もない。金銭に対する姿勢が、デンマーク人と日本人では根本的に異なる。今の日本人は殆どが守銭奴である。米国人も然り。金、金、金の社会になってしまっている。金さえあればなんでもできる、なければ何もできない、そんな堕落した社会になっている。

 できたら、『消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし』を読んでもらうのが一番良いのだが、日を改めて、当ブログでももう少し詳しく簡潔に解説するつもりである。

最後に一言。デンマークに比べると、日本は見窄らしい後進国に見えて仕方がない。皇室という宝物がありながら、政治が悪すぎるために、年々疲弊していく日本。この限界状況を突破するヒントが、デンマークにある、と多くの人に気付いてもらいたい。