沖縄よ! 群星むりぶし日記

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国連の旧敵国条項は死文化しているのか?

3月28日に行われた参議院予算員会で山本太郎議員が質問に立った。その中から国連の旧敵国条項は現時点で死文化しているかどうかの質疑応答を取り上げる。

《 山本議員:長射程ミサイルの保有・製造は、国連憲章敵国条項を見れば、日本の自殺行為と言えます。資料の7、第二次大戦で連合国の敵国であった旧敵国が侵略行為またはその兆候を見せた場合、安全保障理事会の許可なしに軍事的制裁を加えることができる。日本が不穏な動き、重武装化などに走れば、安保理抜きで日本を攻撃しても許される。国際法違反にならない。外務省、常任理事国が反対もしくは常任理事国が国内で批准しない場合、敵国条項は削除できないってことでいいですよね。できるできないでお答えください。

外務省市川総合外交政策局長:お答えいたします。今ご指摘のいわゆる旧敵国条項でございますが、これは1995年の国連総会でですね、すでに死文化しているとの認識を示す総会決議が圧倒的多数の賛成、反対ゼロにより採択されているところでございます。また2005年の国連首脳会合では、国連憲章から敵国への言及を削除するとの全加盟国首脳の決意を示す成果文書がコンセンサスで採択されております。政府としましては、こういうことからいかなる国も旧敵国条項を援用する余地はもはやないものと考えております。

山本議員:答えてないよ外務省。常任理事国が反対・批准しない場合は削除できないんじゃないですか。いかがですか。

市川局長:旧敵国条項の削除ということでございますけれども、この削除を実現するためには憲章の改正が必要でございます。改正には国連総会における加盟国の3分の2の賛成と国連安保理の全ての常任理事国を含む国連加盟国3分の2による本国での批准、という要件が設けられているところでございます。しかしながら、いわゆる旧敵国条項につきましては、先程も申し上げた通りですね、1995年の国連総会ですでに死文化しているとの認識を示す国連総会決議が圧倒的多数の賛成によって採択されております。

2005年の国連首脳会合では国連憲章から敵国への言及を削除するとの全加盟国首脳の決意を示す成果文書がコンセンサスで採択されているところでございます。このようなことからいかなる国も敵国条項を援用する余地はもはやないものと考えているところでございます。

山本議員:誤魔化さなくていいんですよ。常任理事国が反対・批准しない場合は削除できない、それでいいですね、いかがです。

市川局長:国連憲章の改正の手続きにつきましては、先ほど申し上げた通りでございます。繰り返しになって恐縮でございますが、いわゆる旧敵国条項につきましては1995年、国連総会ですでに死文化しているという認識を示す国連総会決議が、全ての常任理事国を含む圧倒的多数の賛成によって採択されてございます。また2005年の国連首脳会合で国連憲章から敵国への言及を削除するとの全常任理事国を含む全加盟国首脳決意を示す成果文書ということでコンセンサスで採択されているところでございます。

山本議員:おかしい。3回同じこと聞いて答えてないんですよ。ちゃんと誤魔化しているだけなんですよ。ここが1番の弱点なんですね。

市川局長:先程も申し上げましたが、国連憲章の改正には国連総会における加盟国の3分の2の賛成と国連安保理の全ての常任理事国を含む国連加盟国の3分の2による本国での批准という要件が設けられているところでございます。したがいまして、常任理事国が批准しなければ国連憲章の改正はできないと言えます。

山本議員:削除できるかできないかで聞いているんですよ。はい、一番のこれネックなんですよ。言われたくないことなんです。だから誤魔化し続けるんですね。現実見てもらっていいですか。日本が不穏な動き、重武装化に走れば安保理抜きで日本を攻撃しても許される、国際法違反にならない。これは常任理事国が賛成しなきゃ無理なんですよ。で、死文化もしていません、見てください。(中国外交部長とラブロフ露外相の発言を示すパネルを指して)ここ数年の間だけでも国連憲章を守れということを常任理事国2カ国から言われている。

日本はいまだ世界から保護観察の立場に置かれている。それを棚上げ国民に知らせず軍備を拡大、30年の不況にコロナ、物価高でも人々は救わず一部の資本家と軍事産業お仲間だけで旨みを分け合う国家の私物化、この国に生きる人々と国を危険にさらす異次元の売国棄民予算に全身全霊で反対することを誓い、日本経済を立て直すことこそが最強の安全保障であると申し上げて終わります。》

以上重要と思われる箇所を太字で示したが、そこから判断する限りにおいては、山本議員の主張が正しい。と言うのも、結局のところ市川局長が条項の死文化をどんなに強調したところで条項そのものが削除されなければ意味がないからである。

市川局長は次のように述べている。「この削除を実現するためには憲章の改正が必要でございます。改正には国連総会における加盟国の3分の2の賛成と国連安保理の全ての常任理事国を含む国連加盟国3分の2による本国での批准、という要件が設けられているところでございます。」

つまり、この発言は、条項の削除は不可能であると言っているのに等しい。にもかかわらず、続けて次のように断言するのだ。

「このようなことからいかなる国も敵国条項を援用する余地はもはやないものと考えているところでございます。」

これは言い過ぎである。旧敵国条項の死文化を決定的にするには削除しかあり得ないことを知りながら、市川局長は「いかなる国も敵国条項を援用する余地はもはやない」と言っている。彼が岸田政権に忖度していることは明らかだろう。

では山本議員の主張を覆す言論人はいないのだろうか?ネットを検索すると田植嘉一という弁護士が山本議員の主張を否認する記事を見つけることができた。

この中で田植氏は、市川局長が言及した1995年の国連総会、2005年の国連首脳会合を取り上げて山本議員の主張を否認する論拠にしているのだ。つまり条項の死文化を正当化しているのである。さすがに田植氏もその論拠が無理筋であることに薄々感じたのか、次のように述べている。

「それでも今なお旧敵国条項が削除されずに残っているのは、条項削除には、総会構成国の3分の2の多数で採択され、かつ、安全保障理事会の5常任理事国を含む国連加盟国の3分の2によって批准されるという国連憲章の改正手続きが必要であり、これを現実に行うとすれば常任理事国である中国・ロシアの反対が予想されるためです。

言い換えると、旧敵国条項の死文化とは、実は寝ているふりをしているだけで、いざという時にはいつでもロシア・中国が蘇らすことができるということである。5常任理事国の内の1国でも反対すれば削除の決議はできないという特権を使うことによって。

山本太郎参議院議員の主張をまともに、そして完璧に論破できる知識人はいないのだろうか?