沖縄よ! 群星むりぶし日記

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日本人の独立心を蝕む米軍基地再編交付金という売国的見せ金

沖縄選出の前衆議院議員照屋寛徳は在任期間中の平成三十年に、米軍再編交付金について、質問主意書を提出したことがある。下の文書はその写しである。(太字で強調した箇所は筆者の責任)

平成三十年一月二十四日提出
質問第二〇号
米軍再編交付金等の交付要件に関する質問主意書

提出者  照屋寛徳


米軍再編交付金等の交付要件に関する質問主意書


 二〇一八年二月四日は、沖縄県名護市長選挙の投開票日である。名護市長選挙には、現職の稲嶺進市長と自由民主党公明党日本維新の会の三党が推薦する前市議会議員の新人(以下「新人候補」という)が立候補を予定している。
 稲嶺市長は、二〇一〇年の初当選以来「辺野古の海にも陸にも新しい基地は造らせない」との公約を掲げ、堅持してきた。そのため、政府は駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法(平成十九年法律第六十七号。以下「米軍再編特措法」という)に基づくいわゆる「再編交付金」の名護市への交付を凍結し続けている。
 かかる状況にあっても、稲嶺市長は、「再編交付金」に頼らない市政運営を展開し、前任の市長時代と比べて予算規模において約百億円増、財政基金も約二倍に増やすなど市民本位の内発的発展に尽力してきた。
 今回の名護市長選挙に臨むにあたっても、稲嶺市長は、普天間基地辺野古移設に反対し、「再編交付金」に依存しない市政運営を掲げている。
 一方、自由民主党公明党日本維新の会が推薦する新人候補は、市議会議員時代には辺野古新基地建設「積極推進」の言動を繰り返しておきながら、今回の名護市長選挙においては、受け入れの賛否を明らかにしていない。
 そのような中で、政府は、新人候補が当選した場合、名護市を「再編交付金」の交付対象とする方針を固めたとの報道がなされている。
 来る一月二十八日告示の名護市長選挙に向けて、昨年十二月二十九日には、すでに菅義偉官房長官が名護市に入り、建設関連事業者らに対し、「名護東道路」の未整備区間の完成前倒しや延伸調査を関係省庁に指示したことを言い募るなど、公共事業をエサにした利益誘導まがいの事前運動をおこなっている。
 また、一月四日には、自民党二階俊博幹事長も来沖し、土地改良事業団体を中心に名護市長選挙への協力を求めるなどの利益誘導を図っている。
 以下、質問する。

一 米軍再編特措法に基づく「再編交付金」の交付要件の全てについて、その根拠条文と併せて明らかにされたい。
二 政府が、名護市を「再編交付金」の交付対象とするかどうかを判断するにあたって、名護市長による普天間基地辺野古移設受け入れ表明は要件となるか否か、その理由と併せて見解を示されたい。
三 いわゆる「再編推進事業補助金」の交付要件の全てについて、その根拠条文と併せて明らかにされたい。
四 政府が、名護市を「再編推進事業補助金」の交付対象とするかどうかを判断するにあたって、名護市長による普天間基地辺野古移設受け入れ表明は要件となるか否か、その理由と併せて見解を示されたい。

 右質問する。

それに対する答弁書の写しが下の文書である。(太字で強調した箇所は筆者の責任)

平成三十年二月二日受領
答弁第二〇号

  内閣衆質一九六第二〇号
  平成三十年二月二日


       衆議院議長 大島理森 殿

衆議院議員照屋寛徳君提出米軍再編交付金等の交付要件に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

 



衆議院議員照屋寛徳君提出米軍再編交付金等の交付要件に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 お尋ねの「再編交付金」については、駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法(平成十九年法律第六十七号)第五条の規定により、同法第四条第一項に規定する再編関連特定防衛施設の周辺地域をその区域とする市町村について、同法第五条第一項に規定する再編関連特別事業を行うことが当該再編関連特定防衛施設における駐留軍等の再編の円滑かつ確実な実施に資するため必要であると認めるときに、これを再編関連特定周辺市町村として指定した上で、同法第六条の規定により、予算の範囲内において、再編関連特定周辺市町村に係る再編関連特定防衛施設における駐留軍等の再編による住民の生活の安定に及ぼす影響の増加の程度及びその範囲を考慮し、当該駐留軍等の再編の実施に向けた措置の進捗状況及びその実施から経過した期間に応じ、当該再編関連特定周辺市町村に対し、再編関連特別事業に係る経費に充てるため交付することができることとされているものである。お尋ねの名護市に係るものを含め、再編関連特定周辺市町村に対する再編交付金の交付については、これらの規定に照らして適切に判断することとしているところである。

三及び四について

 お尋ねの「再編推進事業補助金」については、再編推進事業補助金交付要綱(平成二十九年防衛省訓令第三十三号)第五条の規定により、当該再編関連特定周辺市町村に係る駐留軍等の再編の実施に向けた措置が進捗していると認められること、当該再編関連特定周辺市町村に係る駐留軍等の再編の実施に向けた措置の進捗状況を考慮し、特にその推進を図る必要があると認められること及び駐留軍等の再編の実施に向けた施設整備がその区域内において行われる再編関連特定周辺市町村であって、当該施設整備の円滑な実施のために必要な協力を行っていると認められることのいずれにも該当する再編関連特定周辺市町村が再編推進事業(再編関連特定周辺市町村が行う公共用の施設の整備であって、当該再編関連特定周辺市町村に係る再編関連特定防衛施設における駐留軍等の再編の実施に向けた措置の推進を図るために防衛大臣が特に必要と認めるものをいう。)を行うときに、当該再編関連特定周辺市町村に対し、予算の範囲内において、その費用の一部を補助することができることとされているものである。お尋ねの名護市に係るものを含め、再編関連特定周辺市町村に対する再編推進事業補助金の交付については、当該規定に照らして適切に判断することとしているところである。

質問主意書を太字にした部分<政府が、名護市を「再編交付金」の交付対象とするかどうかを判断するにあたって、名護市長による普天間基地辺野古移設受け入れ表明は要件となるか否か、その理由と併せて見解を示されたい>という質問に対して、政府は明確な答弁をしていない。答弁書を何度繰り返し読んでも明確な答弁は見つからない。そして照屋議員は次のような事実も指摘している。

自由民主党公明党日本維新の会が推薦する新人候補(*渡具知武豊現名護市長)は、市議会議員時代には辺野古新基地建設「積極推進」の言動を繰り返しておきながら、今回の名護市長選挙においては、受け入れの賛否を明らかにしていない。
そのような中で、政府は、新人候補が当選した場合、名護市を「再編交付金」の交付対象とする方針を固めたとの報道がなされている。>

照屋議員の真意は、新人候補(*渡具知武豊現名護市長)は辺野古移設受け入れの賛否を明らかにしていないのに、当選したら政府は名護市を再編交付金の交付対象とするのはおかしいではないかと疑問を呈しているところにある。

今回同様、4年前の選挙でも、渡具知氏は辺野古移設受け入れの賛否を明らかにしないまま当選を果たした。すると政府は、再編交付金を名護市に交付することを正式に決定したのである。答弁書からも明らかなように、受け入れの賛否を明らかにしないのに、なぜ再編交付金が支給されるのか、政府の方針はあくまでもあやふやだ。

なぜこういうことになるのかは事実関係を見れば明らかだろう。渡具知氏は<市議会議員時代には辺野古新基地建設「積極推進」の言動を繰り返して>きた人間だからだ。

つまり、安倍政権(菅官房長官)と渡具知氏との間には辺野古移設受け入れの暗黙の了解があったのだ。そして選挙期間中は、辺野古の「へ」の字もださない戦略を取る合意形成がなされていたことも分かっている。

ところで、基地再編交付金は全額税金である。この事実に対して、当事者である筈の米軍(占領軍)は1円も負担しないという屈辱を誰も感じないのだろうか。米軍(占領軍)基地建設のために県民同士が争い、将来の見通しの立たない袋小路へと追い詰められていく。その触媒の役割を基地再編交付金という税金が担う。

県民投票で7割以上が辺野古移設に反対した。名護市民も7割以上が反対した。その名護市で4年前と同じように、米軍(占領軍)基地移設という大問題を見て見ぬふりをする人間が再選を目指して、基地再編交付金という人参を市民の目の前にかざして、自慢げに精一杯の愛嬌を振りまいて駆け回っている。

辺野古移設を認めなければ、普天間飛行場は返還されないではないか、との反論は聞き飽きた。当ブログで何度も指摘したように、仮に十何年か先に辺野古新基地が完成しても、米軍は決して普天間飛行場を返還しない。

在沖海兵隊は、辺野古新基地移転を望んでいないし、米政府は辺野古飛行場が欠陥施設になることを十分に承知しているからだ。それじゃなぜ、米政府は日本政府に工事を中止するよう勧告しないのだ、という意見もあるだろう。

その答えは、県試算で2兆円を超えるとされる工事費は全額、日本政府が負担することになっているためだ。日本政府が全額負担するなら別に構わないじゃないか、そのまま勝手にさせておけ。これが米政府の本音である。彼らがどんなにしたたかな軍事戦略を持っているか、説明するまでもないだろう。

しかも、ロシア、中国が極超音速ミサイルを完成させた今、東南アジアの安全保障体制が大きく変わろうとしている。当然、海兵隊の存在、あり方も問われ始めている。10年以上先に完成する辺野古飛行場が無用の長物になる恐れは強いのだ。

そんな状況下で掛け替えのない美しい大浦湾を破壊して進める海兵隊のための米軍(占領軍)飛行場とは一体なんだ?

米軍基地再編交付金というもっともらしい名前の税金で名護市民の心を買収する日本政府とは一体何者だ? 歌を忘れたカナリヤならまだ可愛い。自主独立の精神を失った対米従属の絶望の売国政権じゃないか。

売国の道をさらにこのまま歩むのか、自主独立の精神を取り戻すのか、少なくともその指標の一つが明日の投票で明らかになる。