沖縄よ! 群星むりぶし日記

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名護市長選挙は売国奴政党・自民党の前近代的利益誘導型戦術に負けた

2月4日投開票された名護市長選挙の実態が明らかになってきた。新基地建設の争点をぼかし、経済振興策のみに焦点を絞り、市民団体が要求した候補者同士による公開討論を全て拒否するという、狡猾な戦術の他に渡具知陣営が取った秘策があった。

それは、地元建設業界への徹底したテコ入れである。今、新基地建設の現場にはほぼ毎日、100台から200台を超えるダンプカーやミキサー車が出入りしている。工事用ゲート前では民間警備会社アルソックの社員数十名が警備に当たっている。そして海上では、高額で契約した地元漁民の船が反対派の抗議活動を監視している。彼らの殆どが名護市の有権者か、県内在住者である。

新基地建設で収入を得る彼ら、特に建設業関係者に狙いを定めた渡具知陣営側は、徹底した工作を仕掛けて、渡具知候補に期日前投票するよう画策した。事実上の締め付け作戦だ。会社ぐるみとなると、生活がかかる従業員は会社の方針に従わざるを得ない。渡具知陣営のこの戦略が決定的な効果を発揮した。それが事実であることは、期日前投票数を検証することで推測できる。今回の期日前投票数は2万1660人。4年前が1万5835人。その差、5825人。そして、稲嶺、渡具知両候補の得票差は、3458票であった。

期日前投票率は4年前が33・9%、今回が44・4%という数字を見ると、建設業界の票がほぼ丸ごと、期日前投票で渡具知陣営に流れたことは間違いないと思われる。仕事が終わってから仕事着のまま期日前投票所に直行する建設関係の従業員の姿が、多数目撃されている。そして、投票後、紙に何やら書き込む彼らの姿を捉えた写真も公開されている。投票漏れがないかどうか、実数を確実に把握するためだ。それを見れば、彼らが組織的且つ計画的に動いていたことは明らかだ。

ぼくは、期日前投票率が高いのを見たとき、稲嶺市長に票が流れたからだろうぐらいに楽観視していた。何故なら、米軍機の事故が異常とも思えるほど頻発していて、当然、名護市民も多発する米軍機事故の異常さに反発し、新基地建設に反対する稲嶺市長を支持する有権者が積極的に期日前投票に行ったのだろう、と考えたのである。しかし、事実は違った。むしろ、多発する米軍機事故で稲嶺陣営が圧倒的優勢になることに強い危機感を持った渡具知陣営側は、建設業界を丸抱えする戦術を徹底させたのだ。

渡具知氏の経済振興策が名護市民に受け入れられたように一部報道されているが、事実ではない。何故なら、稲嶺氏の経済振興策と渡具知氏のそれと大差はないからだ。わずかな違いはあるが、勝敗を決するほどのものではない。そして、考慮すべきことがもう一つある。それは創価学会票だ。名護市における創価学会票は2000票ほどだと言われている。前回の選挙で公明党は自主投票を決めた。しかし今回、公明党は中央本部の締め付けで渡具知氏側に就いたのだ。

創価学会の約2000票が渡具知氏に流れたのはほぼ間違いないだろう。前回の得票差が3448票だったことを考えるなら、行って来いでこの票差は殆ど0になる計算が成り立つ。だから、ぼくは今回は厳しい選挙だとしても、米軍機事故の異常な多発、政府の対応の無様さを考えれば、稲嶺氏の優勢は動かないだろう、と読んでいた。しかし、名護市の実情を知らない部外者の甘い予測でしかなかった。

自民党政権の戦略はしたたかだった。些か楽観ムードの稲嶺陣営と違い、多数の国会議員を送り込んで各種業界団体に振興策を説いて回らせた。特に建設業界を締め付けた。稲嶺陣営に悟られないように深く深く潜航した。その戦略が勝利を決定的にした、と今となっては結論付けざるを得ない。

利益誘導型政治。前近代的体質。3年間の野党暮らしの後も、党改革どころか自民党の体質は少しも変わっていなかったのだ。今回の名護市長選挙でもこの利益誘導・前近代的選挙が遺憾なく発揮されたと見て良い。新基地建設に従事する人々にとって、仕事がなくなることほど辛いことはない。その弱みにつけ込こまれて、さらなる振興策を嗅がされたら、打たれ強いナグンチュ(名護人)と雖も持ち堪えられないだろう。自民党が長年かけて完成させた卑劣な選挙戦術にナグンチュは敗北したのだ。

その代償は、今後高くつくことになる。渡具知新市長の「あいまいさ」はこれからの市政運営に支障をきたすのは間違いない。「海兵隊の県外・国外移転」と海兵隊の基地に他ならない辺野古新基地容認との整合性をどう取り繕うのか、困難を極めることだろう。時の経過とともに渡具知新市長の苦難は深まり、名護市民は今回の選択を、きっと悔やむことになる。占領軍の基地経済に頼るのではなく、自立型経済を目指すべき時代が来ているのに、名護市民は選択を誤ってしまった。20年前の教訓を活かしきれなかった名護市民の罪は、前近代的手法で名護市民を誑かした売国奴政党・自民党と同程度に大きい、と言わなければならない。