沖縄よ! 群星むりぶし日記

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ネットに巨大な鯨が引っ掛かった

ネットサーフィンしていると、思いがけない動画に行き当たる時がある。昨夜遅く、動画を散策していると、『鯨と斗う男』という映画(動画)が目に止まった。よく見ると、なんと若き日の高倉健が主演である。ぼくは高倉健の映画はほとんど見ている。勿論、そのほとんどはレンタルだが『遥かなる山の呼び声』『幸せの黄色いハンカチ』他数枚のdvdを所有している。

しかし『鯨と斗う男』という映画の存在は知らなかったし、高倉健が主演で出ていることも無論知らなかった。これは大変な儲けもんだ、とつい嬉しくなった。5月6日までの限定公開とある。早速、観る事にした。

出演者 佐野周二(権堂万作):高倉健(山上洋介):小宮光江(松川ユキ)

監督 津田不二夫 1957年公開

大変面白い映画である。面白さのあまり、観終わってある種の感動さえ覚えた。これほど躍動感があって、健康的で男らしい映画を見るのは久しぶり、と言うより、おそらく初めてではないだろうかと思う。

佐野周二高倉健と小宮光江の演技が実に素晴らしい。権堂は老いたとはいえ卓越した鯨の銛打ちだ。自信家で激しい性格ゆえに船員達からは恐れられている。権堂が勤務する会社に若い山上が転任してくる。

山上の兄は以前、権堂と同じ船に乗り、権堂の指導のもと銛打ちをしていた。しかし、ある日船上で倒れ、病院に担ぎ込まれるが死んでしまう。山上は、権堂が兄を殺したと信じて疑わなかった。そんな背景の中、山上は転任してきたのだった。

当然、山上と権堂はそりが合わない。二人は別々の船に乗り腕を競い合う。ユキは偶然、転任してくる山上と同じ船に乗り合わせた縁で顔見知りになった。20歳のユキは、ハンサムで男らしい山上に一目惚れした。ユキは、船員達が集う飲み屋のホステスとして働くことになっていた。ユキは、山上を誘い付き合うようになるが、山上はつれない。ユキはまた、親子ほど歳の離れた権堂にも好意を寄せ、一緒に旅行に行ったりする。

山上は、そんな二人を見て、男女関係ができているのだと疑うようになる。この映画の物語は、権堂と山上とユキの三角関係を中心に展開していくが、それぞれが違う個性を巧みに演じているところに、この映画の見どころがあると言っても過言ではない。男と女の感情のもつれ、船乗りの気性の激しさ。喧嘩の絶えない酒場。

しかし、暴力団同士の争いのような陰湿さは微塵もない。彼らの喧嘩は、激しくはあるが、どこか明るく健康的だ。ポスターにもあるように、酒場でのユキとあるホステスとの大喧嘩も見どころのひと場面だ。そして船揚した本物の鯨を薙刀のような刀で手際よく切り裂く場面も見どころである。

ぼくが小学生の時分、糸満の漁港に鯨工場があった。そこに陸揚げされた巨大な鯨を、職人の手捌きで見事に切り裂くのを見た記憶が蘇る。

権堂と山上の争いは、ユキを間に挟んでどう収束していくのか、結末は言わない方がいいだろう。観てのお楽しみである。ただ最後に言いたいのは、権堂という激しい性格を持つ人間の秘められた優しさだ。年老いてなお銛打ちに執念を燃やす権堂と、若く真面目で一本気の山上、そして男に惚れっぽいが、溌溂とした清純な心を持つ若き女性、ユキ。この個性の強い魅力的な男女三人が、荒々しい港町で絡み合う。

観終わって、心の中に溜まっていた大量のゴミが、綺麗に流れ去っている事に気づいた。公開期限が来るまで、毎日観ようと思う。dvd化されたら購入したい。

鯨と斗う男