埋立承認撤回に向けて機は十分に熟した
今朝の琉球新報に注目すべき論評が掲載されている。「新基地建設阻止へ提言」という沖縄大学名誉教授の桜井国俊氏による論評だ。桜井氏は以下のように書いている。
「埋め立てを律する法律は公有水面埋立法であり、民間事業者の場合には「免許」を、国の場合には「承認」を、免許・承認権者である知事から得る必要がある。そして埋立法32条1項は、埋立免許を得た民間事業者が埋立免許の条件に反する場合には、知事は民間事業者に原状回復をさせることができるとしている。岩国基地滑走路沖合移設「海の裁判」の2013年11月13日広島高裁判決は、この埋立法32条1項が、国にも適用されるとした。すなわち同高裁判決は、埋立承認における国の優位・特権を否定し、国にも原状回復義務を認めたのである。」
「今ならばまだ間に合う。埋立承認を撤回して土砂投入を回避し、県民投票など、それ以後も続く県民の闘いとの相乗効果によって国を埋立断念に追い込むことが出来るならば、広島高裁判決が活きてくるのだ。護岸建設のために投入された岩石を国に撤去させ、辺野古・大浦湾の原状回復を図ることが出来るのである。」
「原状回復に先立って求められるのが埋立承認の撤回である。埋立法32条1項は、民間事業者が埋立免許の条件に違反した場合には、免許その他の処分を取り消す(承認後の事後の「取り消し」を法学者は「撤回」と呼んでいる)ことが出来るとしている。国が事業者の場合にも、埋立承認の条件に違反すれば取り消すことが出来ると判示したのが広島高裁判決である。」
2013年12月27日、仲井真弘多前知事は公約を破って辺野古埋立事業を承認したわけだが、承認書には五つの留意事項が付されている。埋立承認の条件とも言うべきものだが、翁長県政は防衛局に対し、この時の留意事項を遵守するよう何度も通知したにもかかわらず、防衛局は、県の主張を無視して工事を続行している、と言うのが現在の状況である。
先月の23日にも県は沖縄防衛局宛に「普天間飛行場代替施設建設事業における工事停止について」通知した。この文書について桜井氏は次のように解説している。
「提出されていないのは、大浦湾に建設が予定されているケーソン護岸の「事前協議書」である。決定的なのは、ケーソン護岸を設置する地点の地盤が「マヨネーズ並み」とも表現される超軟弱地盤であることだ。この点について上記県知事通知は、“ 承認後に明らかとなった貴職の実施したシュワブ(H25)地質調査の報告書において、「当初想定されていないような特徴的な地質が確認されている」、「谷埋め堆積物については構造物の安定、地盤の圧密沈下、地盤の液状化の詳細検討を行うことが必須」との記述があることからすると、実施設計段階において護岸等の構造形式や配置、施工延長が変更される可能性や、その実施設計に基づき詳細検討しなければならない環境保全対策等も変更される可能性があります ”と指摘している。」
「誠意ある事前協議を求める知事の一連の通知を無視し、防衛局は護岸工事のための石材投入を強行し続けている。取り返しがつかないまでに工事が進んだとの印象を県民に与え、反対をあきらめさせることを狙っているのである。それと同時に防衛局は、回答不能な困難な課題を今秋の県知事選後にまで先送りしようとしている。無原則に新基地建設を容認する新知事の選出を待ち、その下で一挙に打開しようというのである。辺野古・大浦湾の環境を保全しながら超軟弱地盤の地盤改良を行い、ケーソン護岸を建設するというのは、御用学者ならばいざ知らず、職業倫理に誠実な専門家ならばあり得ないと結論するはずのものである。」
防衛局は焦っている。自分たちで調査したケーソン護岸予定地点の地盤が超軟弱地盤であることが分かったからだ。現設計図通り工事を遂行することが不可能になったのである。当然設計の変更を県に申請する必要がある。あらゆる手段を使ってでも工事を阻止すると断言した翁長知事が許可しないことは分かり切ったことだ。この時点で辺野古埋立工事は頓挫する。
とすれば、防衛局の狙いは、11月にも予定される県知事選で「無原則に新基地建設を容認する新知事」を誕生させることにあるのは間違いない。それが実現すれば、超軟弱地盤の改良工事にどれだけ金がかかろうが、工事期間がどれだけ伸びようがお構いなし、となる。安倍内閣はあらゆる手段を行使して、翁長知事に襲いかかってくるだろう。その翁長知事は膵臓癌手術後、健康に不安を残す。手術前に比べて、痛々しいほど痩せた。
しかし、精神は意気軒昂に見える。再選の出馬表明があるかどうか、予断はできないが、本人は恐らく辺野古阻止に命を賭けるつもりでいるのではないか。体力の回復を願いつつ、県民一丸となって翁長知事を支え、辺野古の現場で坐り込み闘争を続ける素晴らしい人々と連帯して、来たる県知事選では4年前の圧倒的勝利を再現させよう。
外交も安全保障も米国に従属する不誠実な安倍内閣に負けるわけにはいかない。面積も人口比も100対1の圧倒的少数派の沖縄県に、占領軍を押し付ける理不尽さ不条理が許されて良いわけがない。沖縄県民は、日本の民主主義が本物かどうか試される最前線で闘っているのだ。最後まで誇りを失わず頑張ろう!