危険で横暴なトランプ政権が世界を不安にする
トランプ大統領が金正恩委員長との会談をキャンセルした。ツイッターで公開した金氏宛書簡を読むと、なぜキャンセルしたのか、その真意を理解するのは非常に困難だ。トランプ氏は、キャンセルする理由として、最近の北朝鮮のあまりにも不適切な暴言を指摘しているが、それがどのような言葉なのかについての具体的例示はない。
一方で、拘束されていた三名を返してくれた事に感謝の言葉を述べている。そして、気持ちが変わったら、躊躇なく電話なり書簡なり送ってくれ、と言っているのだ。つまり状況が変化すれば、いつでも会談の意志のあることが文面から読み取れるのである。にも関わらず「君は核兵器の能力について語っているが、我が国の核兵器は数においてはるかに勝り、かつ強力である。それらが使用されない事を神に祈っている」と脅しの言葉も入れているところが理解に苦しむのだ。
You talk about your nuclear capabilities, but ours are so massive and powerful that I pray to God they will never have to be used.
これは一体どう言うことだろうか。まず第一に気になることは、これまでのトランプ大統領の強行な姿勢だ。イラン核合意から脱退し、米大使館をエルサレムに移し、予定された金正恩委員長との会談をキャンセルした。これだけでも大変な強行策だが、さらに各国と貿易摩擦を引き起こしているのだ。
これら一連のトランプ氏の行動を一体どのように解釈し認識すべきだろうか? 政治的背景がどうであれ、ぼくには、どうしてもトランプ氏には、もともと狂的体質があるのではないか、と疑問に思われて仕方がないのだ。アメリカファースト以外の政治理念がなく、見境のない強硬策が世界にどのような影響を及ぼすか、まるで無頓着に見える。自国だけよければ良い、と仮に考えているとすれば(その可能性は強い)、世界一の大国のリーダーとして失格ではないか。
米朝会談のキャンセルについて、もう少し考えてみよう。今週の初めに、ペンス副大統領は、もし金正恩が取引に乗らないなら北朝鮮はリビアのようになるだろう、と発言したらしい。それに対して、北朝鮮の外務副大臣の Choe Son HUi は昨日の早い時間帯での声明で、ペンスを「無知で馬鹿者」と罵ったことが報じられたのである。
トランプ大統領の書簡にある北朝鮮の不適切な暴言とは、このことを指しているのかも知れない。しかし、何れにしても水面下における交渉が決裂したことは間違いないだろう。ボルトンの強行な発言といい、ペンスの発言といい、最後はリビアのようになるかも知れないと感じた金正恩が、まず核兵器を先に放棄せよとする彼らの前提条件を呑むわけがない。カダフィ大佐とフセイン大統領が辿った惨めな最後を教訓として、 脇目も振らず核兵器開発に専念してきた艱難労苦が、いとも容易に水の泡となる取引を、強かな金正恩が受け入れるわけがない。金正恩の主張は、あくまでも長期的な段階的非核化である。
それをトランプ政権は蹴った。一体トランプ大統領は、こんなことで果たして一流のディーラーと言えるのだろうか? 大いに疑問を感じざるを得ない。ぼくは無論、微塵も金正恩の肩を持つつもりはない。彼は許されざる独裁者であり、我が同胞を拉致した国の最高責任者でもある。その罪に弁解の余地がない事は明白だ。
しかし、そんな相手だからこそ、タフで骨太な交渉が求められるのではないか。金正恩が綿密に構想を練って朝鮮半島の統一を表明し、米朝会談を呼びかけた機会を最大限活かすためには、ある程度の妥協は当然必要であり、長い時間をかけて忍耐強く交渉に臨む覚悟が必要である。
腕力に任せて短期間で物事を解決しようとしても、少しも良い結果にならなかった数多くの事例を、我々は今迄嫌という程見せつけられてきたのではなかったか。ベトナム戦争、アフガン戦争、イラク戦争。リビアの崩壊、シリア戦争・・・。
すべてアメリカ合衆国が引き起こした地獄だ。今回のトランプ大統領の行動を見ると、ホワイトハウスの住人達は、自国が犯した過去の過ちを何一つ反省もせず、同じ轍を踏もうとしているとしか思われない。トランプ政権は戦争ビジネスの遺伝子を引き継ぐ、危険で横暴なアメリカ合衆国の伝統的な性格を剥き出しにしている。
予期せぬ小事が原因で、第三次世界大戦の引き金が引かれる危険性は、トランプ政権の不安定さと強行な姿勢にある。トランプ氏よ、眼を覚ませ!無謀な短期決戦は、人類にとって最悪の結果しかもたらさないことを自覚せよ!
Dear Mr. Chairman:
We greatly appreciate your time, patience, and effort with respect to our recent negotiations and discussions relative to a summit long sought by both parties, which was scheduled to take place on June 12 in Singapore. We were informed that the meeting was requested by North Korea, but that to us is totally irrelevant. I was very much looking forward to being there with you. Sadly, based on the tremendous anger and open hostility displayed in your most recent statement, I feel it is inappropriate, at this time, to have this long-planned meeting. Therefore, please let this letter serve to represent that the Singapore summit, for the good of both parties, but to the detriment of the world , will not take place. You talk about your nuclear capabilities, but ours are so massive and powerful that I pray to God they will never have to be used.
I felt a wonderful dialogue was building up between you and me, and ultimately, it is only that dialogue that matters. Some day, I look very much forward to meeting you. In the meantime, I was to thank you for the release of the hostages who are now home with their families. That was a beautiful gesture and was very much appreciated.
If you change your mind having to do with this most important summit, please do not hesitate to call me or write. The world, and North Korea in particular, has lost a great opportunity for lasting peace and great prosperity and wealth. This missed opportunity is a truly sad moment in history.
Sincerely yours
Donald J. Trump
President of the United States of America