沖縄よ! 群星むりぶし日記

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「引き分け」ではないプーチンの鮮やかな一本勝ち

北方領土返還交渉がにわかに動き出した。

14日シンガポールでおこなわれたプーチン大統領との会談で、安倍首相は1956年に締結された日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意した。

会談を終えた後の記者会見を見ると、安倍首相は喜びを押し殺したような表情で、上機嫌だった。重層的思考が苦手の安倍首相らしい特徴が現れた記者会見だった。なんと単純な男だろう。

検証するまでもなく、プーチン大統領の圧倒的外交の勝利である。なぜならば大統領就任以来、プーチン北方領土問題は日ソ共同宣言を基礎にして解決したい、とずっと言い続けてきたからだ。

二十三回目となる今回の日露首脳会談は、プーチン大統領の年来の主張に安倍首相が乗る形になった。

安倍首相の完全な敗北である。

なぜそう断言できるか、日ソ共同宣言を読めば明らかだからである。日ソ共同宣言は十条から成る短い宣言文だが、重要な条文は6条と9条である。

6  ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国に対し一切の賠償請求権を放棄する。日本国及びソヴェト社会主義共和国連邦は、千九百四十五年八月九日以来の戦争の結果として生じたそれぞれの国、その団体及び国民のそれぞれ他方の国、その団体及び国民に対するすべての請求権を、相互に、放棄する。

9   日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。

さて、6条は日本にとってこれ以上ない屈辱的条文である。歴史を振り返るまでもない。

8月6日に広島、9日長崎に原爆が投下された。その後ソ連は日本に攻め込み満州国にいた日本兵を約57万人も捕虜としてシベリアに抑留し、千島列島を占領した。8月15日の戦争終結宣言後もソ連は日本を攻め続けた。

日露戦争の怨みを晴らすのだ、とスターリンは言った。独裁者スターリンの許されざる犯罪。しかし、6条は、明らかに国際法違反のシベリア抑留問題を帳消しにして、賠償請求権を放棄せよと述べているのだ。

「その団体及び国民に対するすべての請求権を、相互に、放棄する。」

ソ連は日本に侵略した側である。日本に対して賠償請求できるのは何もない。逆に日本には巨額の賠償請求ができる資格がある。相互に放棄する、とはよくも言えたものだ。

しかし、時の日本政府はその資格を自ら放棄したのである。この事実だけでも日ソ共同宣言はソ連の完全勝利、日本の屈辱的敗北が明らかではないか。

さて9条。これはどの方向から読んでも歯舞群島色丹島だけを引き渡すと述べているに過ぎない。択捉島国後島については、一言も触れていない。

しかも、プーチン大統領が指摘したように、平和条約締結後に引き渡される歯舞群島色丹島の主権がどの国に属するか明示されていないのだ。ということは、この主権帰属問題を取り上げて、ロシア側は今後の交渉を有利に導くように利用するのは間違いない。

日本政府は従来、北方四島の一括返還を原則としていた。安倍首相はこの原則を捨てたことになる。

今後の交渉次第では、歯舞群島色丹島2島返還プラスアルファもあり得ると述べた評論家がいたが、四島一括返還とは比べるべくもないほどの僅かなものだろう。

択捉島国後島は永久に還ってこないだろう。単細胞の安倍首相は功を焦り過ぎたのだ。その結果、日本の実力は此の位のものでしかないことを世界に表明することになったのである。

日ソ共同宣言を基礎にした北方返還交渉なら、誰が総理大臣でもできることだ。予め用意されたレールの上を歩くだけだからだ。少しも自慢できるものではないが、安倍首相は、彼のお坊ちゃん的性格からみて、自分の功績として大いに得意がるに違いない。

大人のプーチン、子供の安倍晋三の絵柄がますます鮮明になった二十三回目の日露首脳会談だった。

安倍晋三が総理大臣でいる限り、日本にとって良いことは何もない。安倍晋三、今すぐ政治家をやめろ!