仲代達矢の思い出
順番待ちしていた前の車が客を乗せて走り去る。それに続いて1番前の方に車を動かす。時計の針は23時を指している。暫くすると、男女一組の客が近づいてきたので、後ろのドアを開けた。男に何か話しかけながら、先に男を中に入れると、女は車から離れた。そして男に手を振って去って行った。「無名塾まで」と男が言う。
無名塾?聞き覚えのある声だ。ひょっとして、と思い後部座席を振り向くと、やはりその人だった。” 仲代さんですね?” ” はい、そうです。” 独特のねちっこくて低い声が返って来た。胸が高鳴る。大俳優仲代達矢、間違いなくその人だった。近くのスナックで飲んだのだろうか、少し酔っているようだ。先ほどの女性が少し気になった。「リア王 」を演じていた頃なので、あご髭を長く伸ばしている。無名塾は、先日乗せた女性のお客さんから、ここが無名塾よ、と教えてもらっていたので、場所は知っていた。用賀駅から環八通りを渡って、玉川病院の先にある。周りに大きな建物はなく、暗い車道をヘッドライトを頼りに走った。何を話して良いかわからずに、” 沖縄へはいかれたことはありますか?”と突飛に質問してしまった。”昔あります。”と言って、少し間を置いてから、” 沖縄へは昔行ったことがあります。”と繰り返した。それからどんな会話を交わしたか、覚えていない。映画の話はしなかったように思う。仲代さんの映画はそれほど観ていないことに気がついたからかもしれない。やがて無名塾に到着した。2キロ圏内なので、料金は710円である。仲代さんは ” 釣りはいらないから”と言って千円札を差し出した。内心、料金はもらわないことにしよう、と考えていたので、焦ってしまった。” ありがとうございます”。恩を着せるつもりが、逆に着せられてしまった。無名塾の中はまだ明かりがついていて、若い人が数人いた。ガラス窓を下ろして、もう一度 ” ありがとうございました。”と言ったら、入口の手前で軽く頷いてくれた。黒っぽいトレーナーのラフな格好をしていた。10年ほど前、荏原交通という会社で、タクシーの運転手をしていた頃の思い出である。短い時間の出会いだったが、車の中という狭い空間は濃密な雰囲気を作り出す。以来、仲代さんは他人のような感じがしない。と、ここまで書き進めたところで、全く偶然だが、今日のNHKのしぶ5時というニュース番組に仲代達矢が生出演するという。実に不思議である。テレビをつけっぱなしにして、時間が来るのを待つ。みると、新作の紹介も兼ねた内容だ。84歳だが、年齢を感じさせない。
カッコいい、と正直思う。新作『海辺のリア』。観に行くとしよう。
お知らせ(保守も革新も日本人なら辺野古へ行こう!NO MARINE !)
月曜日 午前9時発 平和市民連絡会
火曜日 午前9時発 オール沖縄那覇の会
水曜日 午前6時発 平和市民連絡会
午前9時発 島ぐるみ会議
木曜日 午前9時発 平和市民連絡会
金曜日 午前9時発 平和市民連絡会
土曜日 午前6時発 平和市民連絡会
午前9時発 島ぐるみ会議
(いずれも県庁前広場発)