沖縄よ! 群星むりぶし日記

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日米同盟の役割は「日本に国防能力を持たせないこと」

伊藤貫著『中国の核戦力に日本は屈服する』(小学館101新書)より抜粋する(177〜179頁)。

< 日米同盟の役割は「日本に国防能力を持たせないこと」

クリントン政権時代の米国の対日政策に関して、筆者には面白い思い出がある。一九九四年に筆者は、当時ペンタゴンで日本部長を務めていたポール・ジアラ中佐と、彼のオフィスで激しい議論をした。クリントン政権の対日政策と対中政策に関する議論である。

最初は「三〇分くらい話をしよう」という約束で議論を始めたのだが、途中で議論が過熱してきて、結局、二時間以上の激論となってしまった。

一対一のかなり激しい議論だったので、隣の部屋で仕事をしていた米軍将校が、「あの二人は、なぜ、あんなに大きな声で激しい議論を延々と続けているのだろう?」と、わざわざ様子を見にきたほどである。

ジアラ本部長は、とても正直な人物であった。彼は、クリントン大統領とペリー長官が「本音では、日本のことをどう思っているか」を、正直に説明してくれた。

筆者がクリントン外交の欺瞞性を率直に指摘したので、彼も正直に、クリントン政権の対日政策の本音を聞かせてくれたのである。ジアラ部長は、筆者に面と向かってはっきりと、以下のことを述べた。

クリントン政権の対日政策の基礎は、日本封じ込め政策だ。冷戦後もアメリカ政府が日米同盟を維持し、米軍を日本の軍事基地に駐留させ続ける理由は、日本人に自主防衛する能力を与えたくないからだ。1990年にブッシュ政権は対日政策のコンセプトを大きく修正し、『日本を封じ込める』ことを、米国のアジア政策の基盤とすることを決定した。

クリントン政権も同じ考えだ。クリントン政権のアジア政策は米中関係を最重視するものであり、日米同盟は、日本に独立した外交・国防政策を行う能力を与えないことを主要な任務として運用されている。

現在、北朝鮮の核開発が問題となっているが、たとえ今後、北朝鮮核兵器を所有する事になっても、アメリカ政府は、日本が自主的な核抑止力を獲得することを許さない。東アジア地域において、日本だけは核抑止力を所有できない状態にとどめておくことが、アメリカ政府の対日方針だ。

この方針は民主党だけでなく、共和党政権も賛成してきた政策だ。最近の日本の政界では、小沢一郎が『日本を普通の国にする』などと主張しているが、とんでもないことだ。あの小沢とかいう男は、思い上がっている。アメリカの軍事政策の管理下にある日本人のくせに、自分の立場をわきまえていない。

アメリカ政府は、日本が自主的な外交・国防ができる能力を持つ『普通の国』になることを、絶対に許さない。1945年9月の対日占領政策決定時から現政権まで、日本人が真の国防能力を持てない状態にしておくことが、日米同盟のもっとも大切な役割なのだ」

日本に自主的な外交・国防能力を持たせないと明言するポール・ジアラ日本部長(当時)の主張がとりわけ特異なものなのではない。伊藤氏は、同書でジアラ氏と同じ主張をする米政府の複数の高官達にも言及している。

つまり、日米同盟の役割は「日本に国防能力を持たせないこと」という米政府の本音を、伊藤氏は見事に暴露・例証してくれたのだ。日本のマスコミは、日米同盟の本質について決して報道しない。ほとんどは表層的な報道ばかりである。

その意味でも、我々は伊藤氏の論証と警鐘を、もっと深く真摯に受け止めなければならない。護憲左翼と拝米保守で充満した日本の現状は、極めて危機的である。伊藤氏が唱える「自主的核抑止力」を一刻も早く実現する必要がある。