沖縄よ! 群星むりぶし日記

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岸田新総理大臣の奇襲攻撃は国民を馬鹿にした暴挙

見てくれの良い岸田新首相が、早くも本心を剥き出しにした。14日に衆議院を解散、19日公示、そして31日投開票という総選挙日程を公表したのだ。このあまりの早技は流石に自民党諸君にも寝耳に水だったようである。多くの議員は11月半ば頃を想定していたからだ。

歴代1位の記録となる最短の衆議院解散総選挙

岸田新首相よ、なぜこうも急ぐ必要があるのだ、一体何をそんなに焦っているのだ。勿論、言わずもがな、答えははっきりしている。選挙を有利にするためだ。

  • 野党連合が統一候補の名簿を完成させる前に解散を打つ
  • 内閣の新鮮さを最大限利用する(新閣僚の誰彼にボロが出てからは遅い)

これが岸田新首相の本音だろう。それ以外は考えられない。選挙は武器を使わない戰だ。そう考えると、岸田氏が取った行動は立派な戦術の一つではある。しかし、民主主義の視点で見ると大きな問題を孕んでいると指摘せざるを得ない。

殺す殺されるの戦国時代なら奇襲攻撃も許されるだろう。しかし今の日本は議会制民主主義体制を敷く国である。その根幹を成す民主主義の要諦は討論にあるはずだ。国会における徹底した討論こそが政治を健全化させるための不可欠要素のはず。

しかしながら岸田氏が取った行動は、できるだけ討論を避けようとする逆方向であり、これでは健全な民主主義が育つはずもない。確かに衆議院の任期を考えると日にちが限られていることは理解できる。衆参両院での代表質問が予定されていることも了解済みだ。

しかし、そのような状況下でも一国のリーダーたる重責を担う総理大臣に任命されたからには、自ら進んでたとえ1週間でも良いから、全閣僚出席の下、予算委員会を開いて野党諸君と堂々と侃侃諤諤の質疑応答に臨むべきだろう。

自ら組閣した新閣僚を自信を持って正々堂々と国民の前に披瀝すべきだ。国会で繰り広げられる与野党の論戦を見ることで国民はどの政党に票を託せば良いかの判断材料とすることができるのだ。

しかし、岸田氏の目は国民の方には向いていなかった。選挙に勝つためだけの小賢しい手段を選んだ。国民は岸田新内閣が何を考えているのか、日本の舵取りをどの方向に切ろうとしているのか、皆目見当がつかないまま投票せざるを得なくなった。

これはあまりにも酷い。やはり自民党は自己浄化のできない政党なのだ。

4年前も奇襲攻撃を仕掛けた総理大臣がいた。安倍晋三だ。あの時、民進党旧民主党)は小池百合子都知事が立ち上げた新党・希望の党に合流するしないで分裂した。

その分裂劇に心躍らせた安倍氏は、ここぞとばかり奇襲攻撃に出た。衆議院所属の全ての国会議員が強制的に辞職させられる衆議院解散である。これだけでも眉唾ものだが、解散の大義名分がまた泣けるほどに素晴らしいものだった。「少子化国難」(!)これが安倍氏が唱えた大義名分だった。

しかし、彼が掲げた大義名分は、あくまでもこじつけである。日本の少子化は70年代からすでに顕在化していた大問題だ。しかし政権党である自民党はなんら有効な手を打つことなく今日まで来ていた。それを今更「少子化国難」? それが衆議院解散の大義名分? 冗談じゃない、本音は野党潰しじゃないか。うるさい野党をさらに無力化できれば、憂なくもっと好き勝手なことができる。安倍晋三はそう考えた。そうやって7年8ヶ月に渡る悪夢のような安倍政治が続いたのだ。

では岸田氏と言い、安倍氏と言い、彼らの解散に対する理念のどこに問題があるのだろうか?

それは議会制民主主義に対する理解があまりにも貧弱で、手前勝手すぎる点にある。国会が正常に機能するためには、健全な野党の存在がどうしても必要になる。内閣総理大臣を頂点とする行政府の横暴を抑止できるのは、議院内閣制においては立法府における野党だけである。

立法府には与党の自民党もいるが、行政府は自民党が握っているのでほぼ一心同体と言ってもよく、内閣(行政府)に対するチェックは当然の如く甘くなる。与党である自民党議員あるいは公明党議員の質疑応答時間になると、多くの国民はテレビを消すか他のチャンネルに切り替えるのではないだろうか。これは議院内閣制の疑問点であり、このシステムの限界と言えるだろう。

いずれにしても内閣(行政府)の横暴を抑制するには野党の健闘を期待する他はない。しかも健全な野党でなければならず、理想を言えば議席数において与野党拮抗するのが望ましい。

そうすれば質疑応答に緊張感が出る。議論は研ぎ澄まされ、諸案件の問題点が国民の前に明らかにされる。そうやって政治の質が高まり、国民のための法律が制定される。国民が期待するのはそのような国会のあり方なのだ。

そのためにはどうしても健全な野党の存在が必要なのだ。自民党が野党に転落しても事情は同じである。健全な野党としての論陣を駆使して次の与党を目指せば良い。健全なる与野党の対決で政権交代を果たし、政治を絶えず活性化しリフレッシュさせるべきだ。

しかるに、岸田氏と4年前の安倍氏の解散のやり方はどうだ。国政を担っているという崇高な責任感は微塵も感じられず、党利党略私利私欲、スケールの小さな小賢しい解散権濫用だろう。

こんなやり方が続くようでは、日本の民主主義は劣化する一方だ。