「2020年、日本は世界の中心で消滅する」この衝撃的な言葉は、佐藤健志著『右の売国、左の亡国』のサブタイトルになっている。
保守、左翼リベラルを問わず、戦後、日本の政治からナショナリズム(愛国心)が消失して久しい。
保守は米国と向き合う時、ナショナリズム(愛国心)の立場で交渉に臨むことはない。理由としては、戦後保守の政治理念が対米従属路線に置かれているためである。
国内向けには、あたかもナショナリズム(愛国心)を説くそぶりを見せるが、欺瞞でしかない。戦後保守が採用した諸政策を丹念に調べると、自ずと明らかとなる。
米国向けと国内向けの顔が異なる戦後保守の、魑魅魍魎とした態度に比べると、左翼リベラルはナショナリズム(愛国心)を公然と否定してきたし、今もそうだ。
理由は、戦前の軍国主義否定にある。ナショナリズム(愛国心)イコール軍国主義。
米軍基地否定も同じ精神からきている。故に、現憲法を平和憲法と見立て、護憲が絶対的使命となる。
戦後保守と左翼リベラルは、多くの政治課題において、根本的に対立しているように見えるが、実はナショナリズム(愛国心)の消失という点で完全に一致しているのだ。
対立しつつも、保守と左翼リベラル双方ともにナショナリズム(愛国心)を消失したまま政治が行われてきた戦後の日本。
別の言葉で言えば、戦後、日本の政治は日本を否定する方向で動いてきた、ということだ。『右の売国、左の亡国』の主旨を、ぼくはそのように理解し、著者の見解に賛同すると同時に、よくぞここまで解明してくれたと敬意を表したい。
佐藤氏の解析眼は容赦なく鋭い。何故日本はかくも衰退の道を歩み続けるのか、その根本的原因を表面的事象に足をすくわれることなく、ズバリ、戦後政治家たちのナショナリズム(愛国心)の消失と日本否定にあると分析して断罪したのである。
戦後保守の対米従属というまやかしのナショナリズム(愛国心)、左翼リベラルの護憲という国防無策。
まさしく本のタイトルどおり、保守の売国、左翼リベラルの亡国そのものではないか。
保守の売国精神がいかに骨の髄まで達しているか、佐藤氏は一つの例を挙げている。安倍首相が2015年4月、アメリカ議会で行った演説「希望の同盟へ」から
<戦後日本が選んだ道は、アメリカと同盟を組んで、西側諸国(注:自由主義諸国の別称)の一員となることでした。そしてわれわれは、アメリカやほかの民主主義諸国とともに、とうとう冷戦に勝利を収めたのです。
この道は日本にとって、成長と繁栄の道でもありました。今なお、これに代わる選択肢は存在しません。(英語版より佐藤氏訳)>
冷戦に勝利したまではよかったとしよう。しかし、その後の国際情勢の変化に対応できずに、米国との関係を益々強化(追従)した結果、新自由主義経済とグローバリズムの嵐に巻き込まれて、我が国は衰退の坂道を転げ落ちてきたのである。
にも関わらず、安倍総理は<今なお、これ(対米追従路線)に代わる選択肢は存在しません>と言ってのけて、米上下両院議員の拍手喝采を受けたのである。
そして売国法案を次々と成立させて、自らの発言の正当性を証明して見せたのだ。
安保法制(自衛隊を米軍に従属させる法案)をはじめとして、外国投資家、ビジネスマン達の利益となる法案が、めじろ押し状態で成立した。
ナショナリズム(愛国心)の消失と日本否定がなせる技と言わねばならない。
さて、来年は東京オリンピックの年、2020年である。そして今年は消費税の10%への引き上げが予定さている、等を考えると、
2020年、日本は世界の中心で消滅する
という佐藤氏の予言がいよいよ現実味をおびて、我々の目前に迫ってくるのである。
『右の売国、左の亡国』を多くの方々に読んでもらいたい。