沖縄よ! 群星むりぶし日記

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沖縄防衛局の杜撰な工事はまさに「傍若無人」そのものである

沖縄防衛局は県の撤回の聴聞期日を9月3日以降とするよう、「聴聞等変更申出書」を県に提出した。その理由として、県提出の「聴聞」通知書はあまりにも大部であり、それに応える準備期間として県指定の今月9日は余りにも短く、通常2カ月は必要であり、控えめに見ても1ヶ月程度は必要だとしている。

確かに沖縄防衛局の言い分にも理が認められる。なぜ今月の9日としたのか、県政の詰めの甘さを指摘しなければならないだろう。しかし、それならば県は条件として聴聞の間は工事を停止するよう提案すれば良い。沖縄防衛局が提案に応じなければ、行政手続法に則って、聴聞を省いて「撤回」を実行する。何も深刻な問題ではない。

深刻な問題は、沖縄防衛局が法令に違反する工事を強行してきた事実にある。少し長くなるがそのことを解説したい。

今月1日、琉球新報は1ページを使って『辺野古埋立承認撤回「聴聞」通知書(概要)』を掲載した。

これを全文読んだ人は誰でも、沖縄防衛局が強行している辺野古新基地建設が法令違反の杜撰極まりない工事であるか、痛感するに違いない。

記述は詳細にわたり、前県政(仲井真弘多知事)が埋立承認した後から現在までの工事経過の全体像をつぶさに検討したものであり、事実に基づいた記述は明快そのもので非の打ち所がないくらい、非常に説得力のある内容となっている。

「国土利用上適具合理的ナルコト」(公水法第4条第1項)の要件を充足していないとして、軟弱地盤について「通知書」は次のように述べている。

< ⑴ C護岸計画箇所の地盤について、埋立承認の審査時の本県の質問に対し、沖縄防衛局は「液状化の可能性は低い」「計画地の直下には圧密沈下を生じるような粘性土層は確認されていないため、圧密沈下は生じない」と回答し、この土質を前提に埋立承認がなされた。

⑵ しかし、承認後の土質調査により、C護岸設計箇所の地盤がマヨネーズ並みとも言われる緩い砂質土、軟らかい粘性土の軟弱地盤で、地震による液状化の危険性があり、軟弱地盤の上に護岸を構築した場合には圧密沈下の危険性があることが明らかとなった。

⑶ 従って、願書に示された構造のC護岸を構築した場合には、地盤の液状化や沈下等による護岸の倒壊等の危険性が存することになる。>

前県政(仲井真弘多知事)による埋立承認後に沖縄防衛局は大浦湾のボーリング調査を詳細に実施した。その結果、C護岸真下の深い海底の地層が超軟弱地盤であるとのデータが表示された。

このデータ記録を見た沖縄防衛局の職員は全員蒼ざめたであろう。「これはまずい、C護岸は後回しだ!」だから予定を変更して工事の容易なところから着工したのだ。しかし、施工順序を変更すれば、当然、環境保全措置の内容そのものを変更する必要があるが、沖縄防衛局はそれをしなかった。

前県政(仲井真知事)が埋立承認の条件として付した留意事項を無視したのである。明らかに契約違反である。沖縄防衛局は公有水面埋立承認願書の「設計の概要」において、どう記載したか。

最初にA護岸、中仕切り岸壁A・Bに着工し、その約2カ月後にC−1護岸、K4護岸、K−8護岸、K−9護岸、中仕切り護岸N−1・N−4・N−5の順序で工事を進めるとしていた。ところが実際は、K9護岸から着工し途中でやめ、工事の容易なところに移行して工事を進めて今日に至っている。

C護岸工事は後回しになった。おそらく一番最後になるだろう。明らかに軟弱地盤が根本原因である。それでも工事を継続するつもりなら、「国土利用上適具合理的ナルコト」(公水法第4条第1項)の法令を遵守しなければならない。そのためには設計変更が必要となる。しかしたとえ設計変更しても、C護岸工事は大変な難工事になることが予想される。海底の軟弱地盤を建築基準法をクリアするまで安定化させるには工事期間の大幅な延長と莫大な費用が追加加算されるのは自明である。

そして翁長知事は、当然、そのような理不尽な設計変更を認めない。それを知っているから、沖縄防衛局はC護岸工事を後回しにして設計変更申請を現在に至るまで申請しないのである。

埋立承認後に発覚したC護岸真下の軟弱地盤は、沖縄防衛局の予定を大きく狂わせた。もし、前県政(仲井真知事)の時に、分かっていたら、仲井真前知事と雖も埋立承認はやらなかったに違いない。

そして新基地建設の問題は軟弱地盤だけではない。「聴聞」通知書が指摘するように、多数存在する。

活断層の存在:「辺野古断層の存在を明らかにした遅沢壮一氏は、承認後の土質調査における音波探査調査及びボーリング調査のデータを検討し、上記海底谷地形は辺野古断層であると認められると判断を示した。」

〇米国統一基準で示された高さ制限:沖縄高専の校舎、辺野古弾薬庫地区内の弾薬倉庫、通信事業者及び沖縄電力の鉄塔、久辺小・中学校等の校舎、周辺地域の民家やマンション等が、米国防総省の統一施設基準書の高さ制限に抵触する

〇統合計画における返還条件が満たされなければ普天間飛行場は返還されないことが明らかになったこと:13年4月5日に日米政府間において合意された「沖縄における在日米軍・区域に関する統合計画」では、普天間飛行場の返還条件として「普天間飛行場代替施設では確保されない長い滑走路を用いた活動のための緊急時における民間施設の使用の改善」を含む8つの項目が示されたが、辺野古新基地への移設が実現しても普天間飛行場返還がなされないとの説明は一切なかった。

しかし、17年4月5日に米会計検査院の米軍再編に関する報告書が公表され、辺野古代替施設の滑走路が短すぎると指摘した。(*滑走路が短すぎることについては、元海兵隊幹部のエルドリッヂ氏も『沖縄論』の中で指摘し、さらに辺野古代替施設は海を埋め立てて造るため津波に弱く、欠陥施設であるとして反対している)

この疑問に対し、17年6月6日の参議院外交防衛委員会において稲田朋美防衛大臣は「緊急時における民間施設の使用の改善について今後米側との具体的な協議やその内容に基づく調整が整わないようなことがあれば返還条件が整わず、普天間飛行場の返還がなされないことになる」と答弁。

沖縄防衛局は埋立必要理由書において、県内では辺野古への移設以外に選択肢がない理由のひとつとして「滑走路を含め、所要の地積が確保できること」を挙げていたが、以上の事実により、辺野古新基地建設では「滑走路を含め、所要の地積が確保」できないことが明らかとなった。

〇留意事項の不履行:留意事項とは、埋立承認にあたり事業主が遵守すべき条件のことを意味するが、沖縄防衛局は違反したまま工事を強行した。

留意事項第1項は「工事の実施設計について事前に県と協議を行うこと」としている。 しかし、沖縄防衛局は県と事前協議を行わず、17年2月7日に汚濁防止膜設置、同年4月25日に護岸工事に着工、留意事項第1項に違反(負担の不履行)した。

「事業者(沖縄防衛局)は全体の実施設計をすべて示して協議を行うことなく工事着工を強行し、本県が再三にわたって工事を停止して全体の実施設計をすべて示して協議をすることを指導しても、これに従わない意思を明示して工事を強行し続けている。」

以上見てきただけでも、沖縄防衛局がいかに杜撰な工事を強行しているか、明々白々ではないか。まさに翁長知事が、撤回表明の記者会見で述べたように、「傍若無人」そのものである。

聴聞」通知書(概要)はその他にも「環境保全ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト」(公水法第4条第1項第2号)の要件を充足していないとして、⑴留意事項2の違反 ⑵サンゴ類に関する環境保全措置 ⑶ジュゴンに関する環境保全措置 ⑷海藻草類に関する環境保全措置 ⑸サンゴ類を事業実施前に移植・移築せずに工事に着手した ⑹ウミボッスを移植・移築せずに工事に着手した ⑺傾斜混護岸用石材を海上搬入したこと ⑻辺野古側海域へのフロート設置について ⑼変更承認申請を行わず施工順序を変更し、サンゴ類、海域生態系、陸域生態系への影響を考慮していないことについて等、詳細に記述しているが、長いので割愛する。

最後に「撤回が制限されないことについて」のところから数ヶ所引用する。

「今日あらたに本格的・恒久的新基地を建設することは、約70年前から沖縄にのみ過重な負担を強いてきた米軍基地をさらに将来にわたって固定化することを意味し、県民世論は、沖縄県における米軍基地の縮小を求め、沖縄県に新たな米軍基地を建設することに反対をしている。」

辺野古新基地建設は、前例をみないような大規模埋立工事で完成までに長い年数を要するが、本県承認時には想定されなかった軟弱地盤が判明したことにより、仮に軟弱地盤の改良工事が可能であるとしても、極めて大規模な地盤改良工事を要することからさらに長い年数を要することが明らかとなり、この間、普天間飛行場周辺の被害・負担は固定化されることになる。」

普天間飛行場に駐留している部隊の沖縄駐留に必然性は認められない。もともと、普天間飛行場配備航空部隊(第36海兵航空群)は神奈川県の厚木飛行場をホームベースとしていたが、厚木周辺の騒音被害が問題となったために、復帰直前の69年11月に普天間飛行場に移駐した。このことからしても沖縄に駐留する必然性は認められない。」

「不利益処分(撤回)の理由とされるのは「災害防止ニ付十分配慮」という要件の不存在や、この要件の充足を担保するための留意事項の不履行、「環境保全ニ付十分配慮」という要件の不存在、「国土利用上適正且合理的ナルコト」の要件の不存在であるから、本県承認の効力を存続させることで人の生命・身体・財産等が重大な脅威にさらされ、本県における国土利用の適正による健全な経済発展等が阻害され、代替性のない大浦湾の貴重な自然環境が脅かされることになり、本件承認の効力を存続させることによる重大な公益侵害が認められるものであるから、効力を消滅させるべき公益上の必要性は極めて高いと認められる。」

「これに対し、事業者(沖縄防衛局)は少なくとも結果的には、C護岸設計箇所の土質調査等について事実とは異なる説明をして承認を受けたことになるが、土質について現在判明している事実を前提とすれば、要件を充足していないことは明らかである。また、埋め立て対象区域周辺の既存建物類が統一基準における高さ制限に違反していることや、統合計画における返還条件により辺野古新基地建設が完成しても普天間飛行場が返還されない可能性があることなどは、本件承認時には国は本県に明らかにしていなかったものであるが、これらの事実が承認前に明らかにされていたならば、要件の不存在はその時点で明らかになっていたことになる。」

「さらに、本県は事業者(沖縄防衛局)に対し、留意事項を遵守しないで工事着工をすることはできないことを行政指導し、事業者が工事着工を強行した後も工事を停止して留意事項を順守するように求め続けてきた。だが事業者は行政指導に従わずに工事着工を強行して続行し続け、遅くとも18年3月には大浦湾海底の土質が、護岸設計の前提とされた設計土層・土質条件とは全く異なるものであることを認識し、設計概要説明書に示された設計では護岸の安全性を確保できないことを認識しながら、この事実を明らかにしないまま着工して工事を強行してきた。」

以上、重要と思われるところから引用したが、可能な限り是非全文を通読してもらいたい。誰でも、見事な論理展開に魅せられて感嘆するのはほぼ間違いないだろう。

この「聴聞」通知書(概要)を読めば、翁長知事が置かれた立場になって判断する時、全国の知事は誰でも「撤回」の正当性を認めざるを得ないだろう。埋立承認を下した仲井真前知事でさへ、承認後の法令違反、留意事項無視を決め込む沖縄防衛局の許すべからず「傍若無人」振りには目を覆いたくなるに違いない。

沖縄防衛局の常軌を逸脱した姿勢の原因は、勿論、安倍内閣にある。行政のトップの頭が悪いと、下部組織まで浸透し、行政の至る所で腐臭を放つ。朝堂院大覚総裁が言うように、日本は今まさに国家非常事態である。その最大の功労者は、売国奴政治を5年半も実行してきた安倍内閣である。

沖縄防衛局に法令違反の工事を許してきた安倍政治に屈するわけにはいかない。そのためには、ウチナーンチュと全国の良識派が連帯する必要がある。