沖縄よ! 群星むりぶし日記

沖縄を、日本を、そして掛け替えのない惑星・地球を愛する者として発信していきます。

日本代表と西野監督に感謝しよう!

試合開始から日本は、予想を遥かに超える闘いぶりで、信じられない位終始ベルギーを圧倒していた。前半を理想的な形で0対0に抑えると、後半戦に入って3分、原口が待望の先制点を決めた。斜めに飛んでゴールの左端に突き刺さる美しいシュート。日本の優勢な試合運びが実を結んだ瞬間だった。素晴らしい。選手全員が躍動している。その表情は落ち着いているし、自信に溢れている。

続いて、原口のゴールから僅か4分後に、乾の鮮やかなシュートがネットを激しく揺らした。斜めに飛んだボールは、今度はゴールの右端に突き刺さったのである。後半戦に入って間もない間の2得点。日本人の誰がこのような光景を想像できただろうか? 否、世界中のサッカーファンが驚愕したに違いない。こうなると、FIFAランクは少しも参考にならない。ドイツもスペインもポルトガルも、そしてアルゼンチンの並み居る強豪チームが既に姿を消してしまっているからだ。この調子だと、FIFAランク3位のベルギーがランク61位の日本に撃沈される運命にあるとしても、少しも不思議ではなくなった。日本の長年の夢、16強を超える歴史的瞬間が目の前に迫っている。可能性は9割以上、歓喜に高鳴る胸を抑えることができない。超えられない壁なんてこの世には存在しないのだ。終了の笛よ、何をグズグズしている、早く鳴ってくれ!

しかし、しかし、嗚呼、笛が吹かれる前に夢は幻となり、幻と現実が入り乱れ混沌とし始めたのだ。190センチを超える長身のヴェルトンヘンが投入されると、なんと悪魔のようなヘディングシュートを決められてしまった。

乾の天使のようなシュートから17分経過していたにも関わらずだ。この1点が、赤い悪魔たちを死の淵から呼び戻すのに大きな役割を果たすことになった。しかし、雪崩を打って日本チームが崩壊したわけではない。確かに、2点先行で気の緩みがあったとはいえ、見事なパス回しは健在だし、追加点のチャンスも何度か作ったのだ。

しかし、悪魔のヘディングシュートから5分後、フェレーニのシュートが決まり、ついに同点に追いつかれてしまった。そこで西野監督は、本田と山口を投入するが、勢いづいた赤い悪魔軍団を追い詰める力は、残念ながらこの時点でほとんど残っていなかった、と言うよりも、明らかに両チームには本気度に僅かではあるが差があるように見えた。この僅かな差が勝敗を支配した。しかし、それでも本田のシュート等があり、まだ勝利の可能性が消えたわけでもなく、同点のまま持ちこたえることができれば、延長戦も十分にあり得る状況だったのだ。

しかし、本田のコーナーキックを奪った後のベルギーの恐るべき反転攻勢の速いこと!この一瞬の虚を突く光速のような速さが、やはり日本との大きな実力の差と言うべきなのだろうか?

稲妻の速さに日本の防御態勢はなすすべもなく、チャドリに3点目を奪われてしまった。アディッショナルタイム3分41秒のことだった。こうなると、もはやどうすることも出来ない。間もなく終了を告げる笛が鳴ったのである。

残念無念、惜しい悔しい!

歓喜と沈黙。鮮やかすぎる明暗は、あまりにも残酷すぎる。西野監督、日本チームメンバー全員、そして日本中のサッカーファンの心の中に広がる巨大な空洞を形容できる言葉を、ぼくは持ち合わせない。

精神が固まるほどに劇的な試合だった。ワールドカップの歴史において、2点先行されての逆転勝利は1970年以来のことらしい。当時は、西ドイツが英国を相手に逆転劇を演じたとUS TODAYが報道している。

負けた側にとっては不名誉な記録として残るのは確かだろう。しかし、数字だけで全体像を把握することは不可能である。スルメを観察して烏賊を理解できないのと同じように。数字は固定している。スルメは死んでいる。生きている烏賊は自由に海を泳いでいる。

教条主義は実存を捉えることはできない。今日の劇的な試合は、実存のぶつかり合いだった。瞬間瞬間が自由の予測できない行動の展開だった。我々は、選手とともに生き、選手と共に敗北したのだ。我々は、実存のぶつかりあいの生き証人である。2対3という記録に残る数字に還元されない生きた試合を知る同時代人である。

試合そのものが映像として記録され、既に過去の出来事になっている。映像を検証して、これからのチーム作りに活かすことはできるだろう。又、当然そうすべきだろう。しかし、記録はあくまでも記録に過ぎない。西野監督も選手達も、日本中のサッカーファンも既に前を向いている。

現在を生きることが何よりも大事なことだ。過去を参考にすることはあっても捉われないこと。これは多分、西野監督の人生哲学だろうと思う。素晴らしい日本サッカーを見せてくれた西野監督に、感謝したい。そして引き続き日本代表を率いてもらいたい。

次のワールドカップまで4年ある。そこに至る間、日本代表は様々な試合をこなさなければならない。その試合毎に西野監督の采配ぶりを見ることが出来る。日本が目指してきたサッカーを西野監督なら、きっと完成度の高い形に仕上げて見せてくれると信じたい。

日本サッカーはまだ始まったばかりである。今日の素晴らしい試合が見事に証明してくれたのだ。