沖縄よ! 群星むりぶし日記

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誰にも予測できない歴史の歯車⚙

ここ数日の間に、世界も国内もめまぐるしく動き、その衝撃度の大きさと複雑さに戸惑い、凡人には到底理解不能だ、と半ば投げやりな気分になり、憂鬱な日々を過ごしていた。

米朝首脳会談の開催地、日本会議に寄せる安倍首相の、昨年とほぼ同じ内容のビデオメッセージ、柳瀬氏の証人喚問、そして米国のイラン核合意からの離脱。全てバラバラのようでいて、お互いが微妙に関連し繋がっているように見えて仕方がない。何故なら、歴史は全体化する全体性だからだ。とは言っても、これらの事象の中で、最も大きな出来事は米国のイラン核合意離脱なのは間違いないだろう。

トランプ大統領は8日、イラン核合意から離脱すると表明した。これが何を意味し、今後の世界の動向にどのような影響を及ぼすか、ぼくの理解の範囲を超えるが、拙い感想を書き留めることくらいは許されると思う。

何故トランプ大統領はイラン核合意にケチをつけ米国だけ離脱する決断を下したのか? 確かに、離脱は選挙公約のひとつだった。同大統領は、選挙で公約した事は、全て実行している。その殆どは中途半端のままだが、兎にも角にも有権者と約束した事を守る態度は立派だと賞賛されてしかるべきだ。

しかし、事はそう単純なことではない。トランプ大統領の今回の決断は、米国の中東政策の根幹に直結しているとみるべきだからだ。米国の中東政策の基本は、イスラエルの擁護にある。だから安全保障常任理事国の英、仏、露、中と独の各国が米政府単独の離脱を非難する中で、イスラエルだけが支持したのは、当然と言えば当然のことである。何故米国は中東で孤立するイスラエルを擁護するのか。それは、米国におけるユダヤ人勢力が隠然たる力を有するからである。トランプ大統領と雖も彼らの影響力を無視する事はできない。勿論、イスラエル建国の歴史的経過も関係してくるが、今は言及を控えたい。

イラン核合意が2015年に締結されて以来、その内容はイランの核開発を抑止するには不十分だと、イスラエルはずっと反対し続けた。イランはイスラエルの敵対国である。憲法イスラエルを地上から抹殺する、と謳っている国だ。そんな国が核兵器保有したら自国の存在が脅かされる。イスラエルがイランの核保有に過敏に反応するのは、当然のことだろう。

イスラエルの同盟国米国がイスラエルに同調し、擁護しようとするのも当然すぎるほど当然と言えるだろう。このような伏線がある以上、トランプ大統領がイラン核合意から離脱したのは、ある意味、不可抗力だったと見るべきである。

しかし、果たしてトランプ大統領の決断は正しかったのだろうか? イラン核合意の期限は2028年迄となっている。イランは合意発足以来、IAEAの核査察を継続して受け入れ、IAEAの保証を取り付けて信頼を得ている。だからこれまで英、仏、露、中、独の合意当事国は合意維持を堅持してきたのだ。

2028年まであと10年ある。仮にトランプ大統領が再選されて任期いっぱい務めたとしても、その先3年間残る事を考えるなら、今回の決断は性急すぎたと言えないだろうか。むしろ合意事項を守りながら、イスラエルとイランの対立が先鋭化しない方向へ、問題解決のためのより良い手段を各国と共に、粘り強く追求していくべきではなかったか。

しかし、トランプ大統領は公約通り離脱したのである。その背景を考えると、北朝鮮の非核化問題が新たに絡んできたことが分かる。つまり、米政府は中途半端なイラン核合意は認めないと明確にすることで、北朝鮮に間接的圧力をかける。俺が来たる米朝首脳会談で北朝鮮に求めているのは、完全な非核化であり、中途半端な妥協は一切認めないということだ、分かっているな金正恩よ!

トランプ大統領の離脱表明には、そのようなメッセージが込められていると読めなくもない。さらに考えられる事は、シリアに駐留するイラン軍に対する警告だ。イランはシリア政府とロシアと連合を組んで、テロリスト集団とシリア反政府派を撃退した。そのために現在も、ロシア軍と共に、シリア国内数カ所に軍隊を駐留させている。勿論、アサド政権の了解のもとである。

この状況がイスラエルにとって大変な脅威になっているのだ。シリアとイスラエルゴラン高原を挟んで国境線が引かれている。目と鼻の先に敵対国イランの軍隊が駐留しているのである。ネタニエフ首相とトランプ大統領の利害が完全に一致している以上、ネタニエフ首相の恐怖をトランプ大統領が共有するのは自然だろう。

だから予定されていたとは言え、離脱という強い態度に出たのだ。複雑極まる中東情勢だが、冷静に考えると、もつれた糸が次第に解けて一本の糸に見えてくる。あえて強引に区分けするなら、米国とイスラエル対シリア、イラン、ロシアという対立軸が現在の中東で展開されている。

ブッシュ政権が引き起こしたイラク戦争の結末が、このような光景を現出させるなんて、いったい誰が予想できただろうか?

トランプ政権は今後、イランに厳しい経済制裁をかけてくるだろう。クリミア問題でロシアに経済制裁をかけ、核問題で北朝鮮にかけ、やはり核問題で繰り返しイランにかける。キューバには遥か昔からかけて、和解したのはつい最近のことだ。

我が日本も、徹底的な経済制裁をかけられた経験を持つ。国家存亡を賭けなければならない程過酷な経済制裁だった。その結果、真珠湾攻撃に及んだのは、つい最近(77年前)のことのように思われる。

嗚呼アメリカよ、経済制裁の大好きな国、アメリカよ!

しかし、世界情勢は刻々と変化する。ロシアと中国が連携して、原油取引をドル建てでなく元建で決済する合意を交わしている。イランから輸入する原油も元建だ。中国は軍隊こそ投入しないが、シリア、イラン、ロシアと連携しつつある。ドル建てで世界経済が回ってきたこれまでの状況が少しづつ解け始めている。

この先、誰にも予測できない歴史の歯車が、激しく軋む音を立てながら大きく回転していく。