沖縄よ! 群星むりぶし日記

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「沖縄にうちなる民主主義はあるか」を批判する 2

2012年8月10日付の同ブラグで又吉(ヒジャイ)は「普天間返還経済効果は大は大嘘 」のタイトルで基地経済が沖縄にとっていかに重要な位置を占めているかを論じている。ある新聞の読者投稿欄に載った文章を取り上げているが、文中の中村くんというのは投稿者の名前である。この論評を読むと又吉(ヒジャイ)の経済の理解度がいかに低く惨めなものであるかが判る。

 <「沖縄に内なる民主主義はあるか」の第三章「県議会事務局の米軍基地全面返還したら9155億5千万円経済効果試算の真っ赤な嘘」で米軍基地返還の経済効果はゼロであることを詳しく説明している。本の説明は長いので別の礼を出して中村くんのいう「普天間基地返還の経済効果が大であること」が嘘であることを説明する。

誰も住んでいない、誰も通らない砂漠に喫茶店をつくったとする。喫茶店に客は一人も来ないから、
喫茶店はつぶれるだろう。

誰も住んでいない、誰も通らない砂漠に自動車の生産工場をつくったとする。つくった自動車は遠く離れた場所に運んで売ることができる。海外に輸出することもできる。誰も住んでいない、誰も通らない砂漠に自動車工場をつくり繁盛することはできる。

自動車がどんどん売れると工場を拡大して従業員を増やす。100人から1000人。1000人から10000人。10000人から50000人と従業員が増えれば、従業員の家族が住む住宅やアパートが増える。それだけではない。
従業員や家族を相手にするサービス業が増えてくる。スーパー、コンビニ、レストラン、喫茶店、映画館、遊園地、スナック、居酒屋などである。

自動車工場は外からお金を流入するシステムであり、従業員・家族は流入したお金を地元に放出する役目である。サービス業は従業員・家族を相手に商売をして彼らからお金を得る。

沖縄で自動車工場の役目をしているのが、農産物や製品の移(輸)出、観光、基地関係収入、交付金である。

A 移(輸)出・・・・・3943億0500万円
B 観光収入・・・・・4298億8200万円
C 基地関係総収入の合計・3388億0600万円
D 交付金・・・・・・・2574億6100万円

基地関係総収入が大きな存在であることがわかる。基地関係総収入がゼロになると沖縄経済に深刻な影響を与えるのは確実である。>

文中の「別の礼」の礼は例の間違いだと思うが、あえて原文のまま引用した。さて、砂漠に自動車工場を作るという例え話は面白いが、それを沖縄の現実に単純に当てはめた途端にとんでもない嘘話になるのだ。

<基地関係総収入が大きな存在であることがわかる。基地関係総収入がゼロになると沖縄経済に深刻な影響を与えるのは確実である。>

何を根拠にこんなことが言えるのだろうか?基地関係総収入がゼロになっても、その跡地は都市計画のもとに再開発されて、経済が活性化するという前提を飛び越えた議論をするからおかしくなるのだ。

返還日程が決定した時点から地主の借地料の保障手当をどうするか、都市計画モデルをいかに推進していくか、等々の議論を時間をかけて行い、その結果策定された計画のもとに基地の撤去作業、整地、道路の整備、住宅等建物の建設というように手順を踏みながら経済活動が発生し、資金が廻るのであって、返還されて直ちに収入がゼロになるというのは暴論でしかない。

しかも、基地関係総収入の中身は我が国の国税である。当然、沖縄県民も国税を納めているし、その国税でもって基地の水道光熱費、住宅等の建設費、基地内日本人労働者の給料等、すべて我が国の税金でまかなっているのである。米国政府が金を落としているわけではないのだ。

防衛省の試算によると、基地の維持費全体の約85%を我が国が負担しているという。米軍基地を抱える世界の諸国と比較すると、断トツの負担である。

しかも基地内で消費されるいかなるものにも我が国の租税権は適用されない、完全なる治外法権である。基地経済が県経済を潤したのは、布令布告によって民間の経済活動が制限されていた復帰以前の過去の現象であり、現在のように民間の経済活動が活発になり、県外からの投資が増大し、観光業が盛んとなった今日の状況をみると、投稿者の中村くんが言う通り、普天間返還の経済効果は大であると言わざるを得ない。

そして翁長知事の言う通り、また県職員が言う通り、今や米軍基地は県経済の阻害要因でしかない。

< 従業員や家族相手のサービス業と同じなのが那覇新都心や美浜にあるような商店である。自動車工場の従業員全員が年間100億円の収入があるとすると、彼らが地元で使うお金は最大100億円である。どんなに店を増やしても100億円以上のお金が使われることはない。
だから、店が増えすぎると倒産する店が増えることになる。それに、不況になって、自動車工場の従業員が半分になり、収入が50億円になれば店に流入するお金は50億円以下であり、店の半分近くは倒産してしまう。米軍基地がすべて返還されたら3388億0600万円の収入が減るのでその分だけ沖縄経済は衰退することになる。経済が衰退している最中に米軍基地跡にサービス業の店を増やしても倒産するだけである。>

米軍基地は自動車工場ではない。何も生産しない純消費地域である。このような地域が潰れても今の沖縄経済が衰退するどころか跡地を活用することによって、経済を発展させる良い機会になる。

沖縄が人口密度の低い過疎地域なら、基地経済効果もそれなりにあるだろうが、人口密度の高い沖縄県においては、経済浮揚の見込めない阻害要因以外のなにものでもない。

那覇新都心や美浜の経済が発展したのは沖縄市宜野湾市嘉手納町那覇の中心部の久茂地など
他の地域の旧商業地の客を奪ったからであり、県全体の経済が成長したわけではない。普天間飛行場のように大規模な場所に美浜のような商業地をつくると美浜の客は普天間に流れ美浜は廃れるだろう。>

那覇新都心や美浜のような商業地ができたことによって、近隣の小売商業地域が廃れてきたのは事実である。ぼくは沖縄市に住んでいたからよくわかるが、山里交差点から胡屋交差点までの大通りはたくさんの店舗がシャッターを下ろしたままである。

だいぶ前から指摘されたことだが、周囲にサンエーをはじめとして大型店舗ができたために零細店舗は太刀打ちできなくなったという動かしがたい明確な理由がある。しかし、これは沖縄だけの問題ではなく、全国的規模の僻地共通の問題でもあるのだ。その遠因は、米国の圧力によって大店法が改正されてから、大型店舗建設の規制が緩和されたことにある。

その解決策は立法に深く関わってくるので、県政が打てる手は限られてくる。今の国会議員どものだらしなさをあてにしないで、沖縄の政治家はこの大店舗建設ラッシュが引き起こす諸問題を県政ができる範囲内でよいから、きめの細かい政策を打ち出すべきだろう。

あまり期待はしないが、しかし、この問題は又吉(ヒジャイ)が指摘するような、基地返還が原因で起きたのでないことだけははっきりしていると言いたい。又吉(ヒジャイ)の米軍に寄り添った経済分析がいかに薄っぺらで思慮に欠けたものであるかおわかりいただけたことと思う。