沖縄よ! 群星むりぶし日記

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荒谷卓著『戦う者たちへ 日本の大義と武士道』について 3

自衛隊の特殊作戦群の創設に関与し、その初代郡長を務めた後、現在、明治神宮武道場至誠館」館長であられる荒谷卓著『戦う者たちへ 日本の大義と武士道』から、戦後世代の多くの日本人が喪失した愛国心とはなにかについて示唆に富むと思われる箇所を抜粋掲載する作業を当分の間、継続することとしたい。

「 三、戦わない日本人

米国に丸投げともいえる日本の安全保障は、『日米同盟基軸』という空虚な言葉で語られるだけで、軍事機能として日本の安全を保障するような実効的メカニズムはまったく存在しない。米国による「核の傘」についてはよく話題になるが、実態は、核どころか通常戦力でさえ、日本の安全確保のために投入されるかどうか不透明なままである。(略)

そもそも、日米同盟はいかなる機能を果たしているのだろうか?少なくとも、日米関係は、冷戦終結を契機に明らかに変質している。大東亜戦争終戦の時点において、アジアにおける米国のパートナーは蒋介石の中国であり、また、米国は早くから対日戦において毛沢東中共とも協力関係にあった。

米国が、対日本開戦を意図して構築した『日本・日本人=悪』とする極悪非道なる存在としての日本観と日本人像は、戦前戦中を通じて、米国民だけでなく欧州各国の人々にも普及され定着しており、終戦時、そのような日本を米国の戦略的パートナーにするなどということは考えられなかった。したがって、日本の中核たる皇位継承権(皇族の範囲)を限定し、防衛力、経済力、産業基盤など国力のすべてを削ぎ落とし、自己保存能力もない集団として、一世紀後には跡形もなくなるような占領政策がとられた。(略)

冷戦構造の中で、日本は米国の期待にこたえた。日本領土内に米軍を展開させることによって、ソ連軍の戦力を欧州正面と極東正面の東西に分割させ、また、西側経済システムの重要な一員としての経済成長を遂げた。このように、米国の対ソ戦略上、日米同盟は軍事・経済面で特別に重要な役割を果たした。ところが、冷戦終結とともに、この戦略構造が消滅し、米国の戦略転換が訪れた。ケナンの予想に反して、中国は経済大国・軍事大国へと成長し、米国のパートナーとしての実力が備わった。ソビエトと中国の決定的な違いは、ソビエトが米国と対抗的経済システムを構築したのに対し、中国は米国の経済システムの中に参入してきたことだ。

一方、日本の経済力と在日米軍基地は、世界戦略上の意義を失うことになった。経済面では、いったんは強力な競争相手とみなされ、政治的関心が持たれたが、今や日本の経済再成長を期待する者はいなくなり、せいぜい、日本国民の保有する金融資産を国際市場に引き出して利用する程度の価値しか見当たらなくなった。在日米軍基地は、経費を日本が払ってくれるなど、特権ともいえる便利な仕組みがあるので、既得権として少しでも居座ったほうが有利だといったところか。

こんな状況では、いくら日本側が経済・金融問題や基地問題で、米側に譲歩したとしても、日本の戦略的価値を高めるような効果はない。いくら『日米同盟基軸」を唱えて米国のご機嫌を伺っても、人間で言えば、いつまでも自立できない大人として、世界中の軽蔑を買うだけだ。」(略)